研究課題
腸管には,数千の種より構成される10の12乗個もの細菌が存在し,その細菌叢は人体へ影響を与えることが報告されている.この細菌叢は各人で異なっており,肉食・菜食中心などの食生活が影響していることが知られている.腸内細菌の制御は,少なくとも一部は,粘膜組織で優勢に産生されるIgAによりなされており、抗体産生の制御は、腸内細菌の制御を始め、免疫応答に重要である。そこで、本研究では、腸管における抗体産生応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。TNFSFに属すAPRILとBAFFは抗体産生応答を正に制御することが以前より知られている。そこで、小腸の代表的な免疫組織であり、抗体産生応答の誘導部位と考えられているパイエル板に注目し、これらのサイトカインがパイエル板のB細胞に与える影響に検討した。その結果、パイエル板のB細胞は、全身性免疫器官として考えられている脾臓より調製したB細胞よりもin vitroにおいて高い反応性を示した。そこで、APRILとBAFFの両方をリガンドとして有すTACIを抗体のFc部と融合させたTACI-Fcを投与することでAPRILとBAFFをin vivoにおいて中和したところ、パイエル板内のクラススイッチB細胞の頻度が低下していた。さらに、この時、小腸内IgA量が低下しており、これらの原因として、パイエル板での胚中心B細胞の頻度が低下したことが考えられた。これらより、腸管に存在するB細胞はAPRILおよびBAFFに対して脾臓B細胞と異なる反応を示し、これらのサイトカインにより負に制御されることが示唆された。
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Cell. Immunol.
巻: 323 ページ: 41-48
10.1016/j.cellimm.2017.10.009