研究課題/領域番号 |
15K07439
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
山城 一雄 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00348921)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 脳梗塞 / Lipopolysaccharide / Toll-like receptor 4 / 自然免疫 / 糖尿病 / 炎症 |
研究実績の概要 |
12週齢のdb/dbマウス(糖尿病)とdb/+マウス(正常)を用いて、脳梗塞における腸内細菌の関与について研究を行った。db/+マウスと比較してdb/dbマウスでは、Lactobacillus ruminis、 EnterobacteriaceaeとEnterococcusの菌数が有意に増加していた。また血中lipopolysaccharide (LPS)濃度の有意な上昇を認めた。さらにdb/dbマウスでは、虚血再還流24時間後の運動障害がより高度で、脳梗塞体積の増大と、より高度の血液脳関門の障害および脳梗塞巣周囲におけるマイクログリアの増加を認めた。LPSのレセプターであるtoll-like receptor 4 (TLR4)は、GFAP陽性細胞(アストロサイト)とIba1陽性細胞(マイクログリア)に発現を認めた。またウエスタンブロット法による解析では、db/dbマウスの脳梗塞巣においてTLR4の発現に有意な増加を認めた。 そこで、db/dbマウスにおいてグラム陰性桿菌であるEnterobacteriaceaeの増加が血中LPS濃度上昇の原因となっていると考え、グラム陰性菌に選択的な抗菌作用を示すポリミキシンBを1週間経口投与して、血中LPSおよび脳梗塞に対する影響を調べた。ポリミキシンBを投与したdb/dbマウスでは、ポリミキシンB非投与db/dbマウスと比較して、血中LPSの有意な減少を認めたが、血糖値および体重には有意な変化は認めなかった。さらに虚血再還流24時間後の運動機能障害が有意に改善し、TLR4の発現が有意に減少していた。以上の結果から、腸内細菌叢の異常に伴うLPSとTLR4による自然免疫を介した炎症が、脳梗塞巣における組織障害に関与しており、腸内細菌叢をターゲットとした治療が脳梗塞組織障害を軽減できる可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸内細菌と脳梗塞における組織障害との関連について、LPSおよびTLR4を介した自然免疫によるメカニズムを中心に解析を行い、概ね計画通り進んでいる。このような腸内細菌による自然免疫を介した炎症が、動脈硬化へ与える影響については、さらに解析を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、腸内細菌叢の異常と脳梗塞組織障害がLPSとTLR4による自然免疫を介して密接に関連していることを明らかとした。そこで、今後は臨床応用が可能な治療法の開発に向けて、プロバイオティクス治療の有効性について検討する。プロバイオティクスの投与によって腸内細菌叢の異常が引き起こす炎症を抑制することで、脳梗塞組織障害への軽減効果および動脈硬化の進展抑制効果が得られるかどうかについて解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の予備があり、当初の予定よりも試薬購入に必要な金額が減ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に必要な試薬購入に使用する予定である。
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