研究課題
糖尿病マウス(db/db)では、正常対照マウス(db/+)と比較して、糞便中においてグラム陰性桿菌であるEnterobacteriaceaeの菌数が増加するとともに、腸管透過性の亢進がみられ、血中ではグラム陰性桿菌細胞膜成分であるlipopolysaccharide (LPS) 濃度の上昇を認めた。db/dbマウスに対して、グラム陰性桿菌に特異的に作用する非吸収性の抗生物質ポリミキシンBを経口投与したところ、Enterobacteriaceae菌数の減少、腸管透過性の抑制および血中LPS濃度の低下がみられるとともに、一過性中大脳動脈閉塞による脳梗塞24時間後において、脳梗塞体積の減少と運動障害の改善がみられ、さらに脳梗塞後1週間の生存率の改善も認めた。免疫染色においては、db/dbとdb/+の両マウスにおいて、脳梗塞巣周囲のミクリグリア、血管内皮細胞、神経細胞にLPSとそのレセプターであるToll-like receptor 4(TLR4)の発現がみられたが、ポリミキシンBを投与したdb/dbマウスでは、脳梗塞巣におけるLPS、TLR4、またTLR4により誘導される炎症性サイトカインのインターロイキン1β、インターロイキン6、TNFαの発現の減少を認めた。以上の結果から、腸内細菌叢の異常に伴い腸管から血中へ流入したLPSが、TLR4を介した炎症により急性期脳梗塞の組織障害に関与していることが示された。
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