アミノ酸は、体内でタンパク質の構成成分としてだけでなく、mTORなどの細胞内シグナル因子の活性化や、旨味成分などとして重要な役割を果たしている。アミノ酸代謝に関する研究は、肝臓、骨格筋などで盛んに行われているが、紫外線などの外部刺激を最も敏感にうける皮膚での代謝については不明な点が多い。そこで、研究代表者は、皮膚でのアミノ酸代謝について明らかにし、他の組織と比較するとともに、紫外線被曝による皮膚でのアミノ酸代謝への影響をオミクスを用いて分子レベルで検討することにした。 昨年度までに、紫外線被曝によって皮膚だけでなく、肝臓でも多くの遺伝子が増減すること、皮膚ではシステイン量の著しい増加、還元型・酸化型両グルタチオン量の増加、タウリン量の減少を明らかにした。グルタチオン量の増加は、紫外線被曝により増加した活性酸素種の除去が関わっており、そのため、グルタチオンペルオキシダーゼ量増加やレダクターゼ量減少が起こったと考えられた。またタウリン量減少には、cysteine sulfinic acid decarboxylaseの減少が関わっていると考えられた。 今年度は、肝臓のコレステロール代謝に関わる変動について検討した。紫外線被曝によって、コレステロール量が増加した。そのメカニズムを検討したところ、コレステロールの律速酵素HMG-CoA還元酵素mRNA量は変化なかった。コレステロールから胆汁酸合成に関わる酵素CYP7A1mRNA量は減少していた。このことから、肝臓でのコレステロール量増加は、胆汁酸へ代謝されないためと考えられた。また、コール酸(1次胆汁酸)量も増加していた。CYP7A1量が減少していたことから、コール酸の増加は、コレステロールからの代謝によるものではなく、血液からの胆汁酸吸収が、増加していることが考えられた。
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