近年、食後高脂血症は、空腹時血中脂肪濃度よりも動脈硬化性疾患発症リスクとして重要であると考えられている。これまで高脂肪食摂取による腸管炎症が食後高脂血症を悪化させる可能性が示唆されていたが、詳細なメカニズムは明らかとなっていなかった。そこで本研究では、高脂肪食誘導性の腸管炎症と食後高脂血症悪化の関連を検討し、抗炎症作用を持つ食品成分で食後高脂血症を改善することを目的とした。 平成28年度までに、抗炎症作用を持つ食品成分をスクリーニングする実験系を構築し、候補分子である食品成分Xを同定した。そこで平成29年度は、そうした候補分子の一つについて動物実験を行うとともに、高脂肪食摂取と食後高脂血症悪化との関連性についてさらなる検討を行った。 まず食事中の脂肪含量の違いで食後高脂血症がどのような影響を受けるか検討するため、10、45、60cal%の脂肪含量の異なる食餌をマウスに1週間摂取させ、食後高脂血症のアッセイを行ったところ、60cal%高脂肪食を摂取したマウスで食後高脂血症が悪化した。さらに抗炎症作用が認められる食品成分Xについて、1週間高脂肪食条件下0.1%濃度で摂取させると、食品成分Xを摂取したマウスで食後高脂血症が有意に改善した。しかし、いずれの条件下でも腸管炎症が起こっているかについて明確な結論が得られなかったため、炎症の有無について様々な手法により、さらなる検討を行っている。
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