研究課題/領域番号 |
15K07442
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 勇二 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20154875)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ストレス応答 / 視床下部 / 小胞体ストレス / 食欲 |
研究実績の概要 |
肥満と糖尿病を含む代謝性疾患、さらに、アルツハイマー病やうつ病のなどの精神疾患に共通した病態として軽度慢性炎症の存在が明らかになりつつある。しかし、炎症の発症機序および炎症と各病因との関連は必ずしも明らかではない。申請者は、高脂肪食による視床下部の軽度慢性炎症に注目し、「視床下部においてストレス応答性転写因子ATF5は神経新生制御因子として作用し、栄養素過剰による視床下部炎症を抑制し抗肥満因子として機能しているのではないか」という仮説を導いた。本仮説を検証するため、ATF5欠損マウスを用いてATF5の抗炎症作用を検証することを本研究の目的とした。 本年度は、小胞体ストレス誘導剤のtunicamycinを投与し、摂食量と体重に及ぼす影響を検討した。軽度の小胞体ストレス誘導剤を成熟雄マウスに投与すると、体重の増加と摂食量の増加が認められた。この増加は、体重当たり0.1μgで観察されたが、0.5μgでは体重の有意な減少を認めた。この増加が神経細胞の小胞体ストレスおよび炎症に起因するかを検討するため形態的手法により検討を進めた。その結果、明確な結論には至っていない。さらに、高脂肪食と同様に、肥満を誘発することが報告されている有機スズ化合物のTributhyl tinを投与しマウスに肥満を誘発することを試みた。本薬剤はレチノイドX受容体のアゴニストとして働くことが知られているが、同時に、小胞体ストレスを誘導することも報告されている。有機スズを成熟雄マウスに投与すると体重が増加した。投与初期に神経細胞の小胞体ストレスおよび炎症の発症を予備的に観察したが、明確な結論には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由は次の通りである。 平成27年度に条件的ATF5欠損マウスを作成すべく、ヨーロッパEUCOMMに組換えベクターを注文したが、先方のベクター確認作業にトラブルが発生し、納入が終了していない。 現在、状況を問い合わせをしているが、納入が延期になっている。速やかな対応を依頼中である。
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今後の研究の推進方策 |
条件的ATF5欠損マウス、条件的ATF5強制発現マウスの作製:個体における機能を詳細に検討する目的で、Cre-lox系およびTet系より臓器及び時期特異的にATF5を欠損する、あるいは、強制発現するマウスを作製し実験に供する。このマウスの導入は米国のKOMPからES組換え済みのES細胞を導入し国内での欠損マウス作製を進める。また、条件的ATF5強制発現マウス作製のためのベクターの作製を進める。 視床下部神経新生へのATF5の関与:野生型あるいはATF5欠損離乳マウスにコントロール食、あるいは、高脂肪食(脂質エネルギー比率45%;Research Diets社)を4から8週間与え、摂食量と体重変化を記録し基本データを取得する。さらに、脳室内へBrdUを投与し増殖細胞を標識する。脳を還流固定し冠状切片を作製し、視床下部の正中隆起、弓状核、腹内側野、及び、室傍核を観察対象とする。視床下部の神経幹細胞は、静止型神経幹細胞、活性型神経幹細胞、TAP、神経前駆細胞、成熟神経細胞へと分化が進むと考えられる。GFAP、Nestin、Sox2、Dcx、NeuN、BrdUに対する抗体を用いて、それぞれの細胞を同定し、高脂肪食あるいはATF5欠損が神経幹細胞系譜に与える影響を検討する。増殖細胞がBrdUで染色されないときには、Ki67あるいはアセチル化ヒストンを増殖期細胞のマーカーとして使用する。この点を前年度に引き続き検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に条件的ATF5欠損マウスを作成すべく、ヨーロッパEUCOMMに組換えベクターを注文したが、先方のベクター確認作業にトラブルが発生し、納入が終了していない。 現在、状況を問い合わせをしているが、納入が延期になっている。速やかな対応を依頼中である
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次年度使用額の使用計画 |
ベクター納入後に速やかに支出する予定である。
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