研究課題/領域番号 |
15K07444
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
竹中 麻子 明治大学, 農学部, 教授 (40231401)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | tocopherol / testosterone |
研究実績の概要 |
1)α-トコフェロール吸収の性差の機構解析:まず、雌雄の性成熟後のラットを16時間程度絶食させ、α-トコフェロールを乳化剤と混合したエマルジョンを経口投与した。投与後の門脈及び動脈血中α-トコフェロール濃度を経時的に測定し、血中へのα-トコフェロール吸収量に性差があるかどうかを解析した。その結果、エマルジョン投与0-8時間後の血中α-トコフェロール濃度がメスでオスよりも有意に高いという結果を得た。次に、α-トコフェロール吸収の性差の原因がテストステロンである可能性を、精巣除去ラットを用いて検討した。精巣除去により糞中α-トコフェロール排泄量が低下し、α-トコフェロール経口投与後の血中濃度が有意に増加した。これらの結果から、テストステロンが消化管からのα-トコフェロール吸収を低下させる可能性を強く示した。 2)テストステロンによるα-トコフェロール体内濃度制御機構の解析:雌雄ラット、精巣除去ラット、精巣除去後にテストステロンを投与したラットを用いて、血中や臓器中の脂質(コレステロール、トリグリセリド、リン脂質)濃度とα-トコフェロール濃度の測定を行った。その結果、肝臓のα-トコフェロール濃度とトリグリセリド濃度は一致して変動(メス>オス、精巣除去で増加、テストステロン投与で減少)することを明らかにし、テストステロンが肝臓中性脂肪とα-トコフェロール濃度の両方を制御する可能性を示した。 3)α-トコフェロール代謝酵素の性差の解析:α-トコフェロール代謝の律速酵素はチトクロムP450(3Aあるいは4F)によるω水酸化反応であるため、これらのサブファミリー中のすべての分子種(3Aで6種、4Fで8種)の肝臓中mRNA量を雌雄ラットにおいて測定した。その結果、メスで高い発現を示す分子種は認められず、α—トコフェロールの代謝活性がメスでオスより高いという現象を代謝酵素の遺伝子発現レベルで説明することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画した実験をほぼ完了し、結果を得ることができた。1)テストステロンが消化管からのα-トコフェロール吸収を低下させること、2)肝臓のα-トコフェロール濃度はテストステロンによって制御され、この濃度が中性脂肪と同様に変化すること、の2点を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)トコフェロールの吸収トランスポーターの解析:α-トコフェロール吸収にかかわるとされる小腸の脂質トランスポーター(NPCL1、SR-BI)のmRNA量とタンパク質量を雌雄ラット、性腺除去ラット、性ホルモン投与ラットにおいて検討し、性ホルモンがα-トコフェロール吸収の性差の要因である可能性を検討する。また、エゼチミブ投与(NPCL1阻害)によるα-トコフェロール吸収阻害がトコフェロール吸収の性差を解消するかどうかも検討する。 2)テストステロンによるトコフェロール吸収の制御機構の解析:平成27年度の結果から消化管からのα-トコフェロ-ル吸収がテストステロンによって制御される可能性が示されたため、この機構を培養細胞で検討する。小腸吸収細胞のモデルとしてCaco2細胞を用い、テストステロン処理がα-トコフェロール吸収活性と吸収トランスポーターの発現量に及ぼす影響を解析する。 3)ビタミンE欠乏による不安行動増加の性差:申請者らはこれまでに、ビタミンE欠乏による不安行動増加が、性成熟後の雄でのみ生じることを明らかにしている。そこで、卵巣除去ラットと精巣除去ラット、性ホルモン投与ラットに対照食あるいはビタミンE欠乏食を4週間与え、ビタミンE欠乏による体内α-トコフェロール濃度の低下と不安行動増加に性ホルモンがおよぼす影響を検討する。 4)ヒトでのトコフェロール吸収・代謝の性差の解析:α-トコフェロール摂取下のヒト尿中α-CEHC濃度を測定する。具体的には、倫理委員会に承認された手続きを経た被験者(大学生ボランティア男女各20名)に1日100mgのα-トコフェロールを4日間摂取してもらい、最終日24時間の尿を採取(蓄尿)する。この尿に含まれるα-CHEC濃度をHPLCにより測定する。これにより、ラットでみられた尿中α-トコフェロール代謝産物の性差がヒトでも見られるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金額をほぼすべて使用したが、消費税等の金額の端数からわずかな残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
金額が小さいため、次年度の予算計画を特に変更せず、物品費に組み込んで使用する。
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