研究課題
本研究は、ビタミンE(α-トコフェロール、α-T)吸収・代謝の性差発現機構解明を目的とし、糞中へのα-T排泄量がオスで多いという性差の機構解明を進めている。2015年度には男性ホルモンであるテストステロンが消化管からのα-T吸収を低下させることを明らかにし、2016年度には胆汁へのα-T分泌活性および小腸におけるα-T吸収トランスポーターNiemann-Pick C1-Like 1 (NPC1L1) の活性がこの性差の原因ではないことを示した。2017年度は消化管からのもう1つの吸収トランスポーターであるScavenger receptor class B type 1 (SR-BI) の寄与について検討を行った。Wistar系の雌雄ラット(8週齢)をAIN93G準拠の標準食で飼育し、肝臓・血中α-T濃度がメスでオスより高いこと、糞中α-T排泄がオスでメスより高いことを確認した。このラットの小腸上・中・下部のSR-BI量の測定を行ったところ、いずれの部位でもメスでオスよりSR-BI量が有意に高いこと、一方SR-BI mRNA量には差がないことが示された。さらにWistar系雄性ラット(6週齢)に精巣除去あるいは偽手術を行い、4週間後(AIN93G準拠の標準食下)に肝臓・血中α-T濃度が精巣除去により有意に上昇すること、糞中α-T排泄が精巣除去により低下することを確認した。このラットの小腸SR-BI量の測定を行ったところ、上部および中部で精巣除去によりSR-BI量が増加することを明らかにした(下部では明確なバンドが取得できなかった)。以上の結果から、テストステロンが翻訳以降の段階で小腸におけるSR-BI量を低下させることにより、オスでビタミンE吸収が低下し、体内濃度が低くなるという性差発現機構の可能性が初めて示された。
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