研究課題/領域番号 |
15K07445
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
井深 章子 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 教授 (60301420)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 甘味タンパク質 / 味覚修飾活性 / ミラクリン |
研究実績の概要 |
ミラクリンは、酸味を甘味に変換する活性(味覚修飾活性)を有するタンパク質である。遺伝子配列が約20年前に報告されて以来、複数のグループによって研究が行われているが、組換えタンパク質の大量生産が困難なため、分子レベルでの解析が進んでいない。本研究では、ミラクリンとの相同性が高いミラクリン類似タンパク質(Miraulin-like proteins, MLPs)を研究対象とし、アミノ酸置換によってMLPに味覚修飾活性を付与することで、ミラクリンの味覚修飾メカニズムを明らかにすることを目指している。 申請者はブドウ、ダイズ、ナンヨウザンショウ由来MLP遺伝子試料を保有している。本年度は、特にミラクリンとのアミノ酸配列の相同性が高いブドウ由来MLP(vvMLP)の大量発現系の構築と精製条件の確立を行い、分子の二量体形成の有無を解析した。 酵母Pichia pastorisを宿主とした発現系では、vvMLPは可溶性タンパク質として大量に分泌された。一方、大腸菌を宿主とした発現系では、タンパク質は不溶性画分に確認される傾向が強かったものの、pCold系の発現ベクターを用いて低温で培養することで可溶性vvMLPを得ることに成功した。これらの系で発現した組換vvMLPをゲルろ過クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEで解析したところ、vvMLPは単量体として存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ミラクリン類似タンパク質(MLP)の発現系構築・精製条件確立を行い、精製タンパク質を用いてMLPの基本的な性状(味覚修飾活性の有無、二量体形成の有無、トリプシン阻害活性)を解析することを目標とした。実際には、ブドウ由来MLPの発現系構築・精製に成功した。また、ゲルろ過クロマトグラフィー等を用いた解析により、本タンパク質が単量体であることを明らかにした。よって本研究課題は概ね計画に沿って順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、精製タンパク質の解析(味覚修飾活性、トリプシン阻害活性)を行った上で、当初の計画通りブドウ由来MLPとミラクリンのキメラタンパク質を構築する。 ミラクリンの味覚修飾活性には、二量体化が重要であると考えられている。前年度までの研究からブドウ由来MLPは単量体であることが判明した。また、ミラクリンにおいてサブユニット間ジスルフィド結合を形成するシステイン残基はMLPには存在しない。そこで、このシステイン残基を有するキメラタンパク質の構築を行い、可溶性タンパク質として大量生産できる二量体タンパク質の作成を目指す。二量体キメラタンパク質の生産に成功した場合は、さらに味覚修飾活性に必須とされるヒスチジン残基を導入することで、MLPへの味覚修飾活性の付与を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク質精製用カラムの購入を予定していたが、本年度内の使用の目処が立たなかったため購入を見送り、その分が来年度に繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した予算は、前年度購入を見送ったタンパク質精製用消耗品(カラムなど)の購入に充てる予定である。
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