日本唯一の分子量57kDaのグルテリン前駆体(以下プログルテリン)を多量に蓄積する酒造好適米「華さやか」を材料に、まだ明らかにされていない難消化性米タンパクであるプログルテリンが生体機能に及ぼす効果を明らかにするために種々検討した。人工消化試験において「華さやか」酒粕は通常の酒粕と比べタンパク消化率が4割低く、インビトロのコレステロール吸着性は2倍だった。また、人工消化残渣のタンパク質電気泳動から麹酵素では分解されないプログルテリンは、人工消化液では分解された。4週齢オスのKK-Ayマウスをコントロール群(カゼイン)、華さやか群(プログルテリン主体の酒造好適米)、華吹雪群(プログルテリンの少ない酒造好適米)の3群に分け、酒粕由来タンパク質粉末を10%置換した高脂肪食にて実験飼育をおこなった結果、コントロール(カゼイン)群と比較し、華さやか群、華吹雪群において中性脂肪値、GPTが低下傾向を示した。また臓器重量は腸間膜白色脂肪組織重量がコントロール群と比較し、華さやか群で有意に低下し、糞便の脂質排出量は多かった。この作用がプログルテリンによるものかを明らかにするために、タンパク組成がプログルテリン主体の「華さやか」、プロラミン主体の「春陽」、グルテリン主体の「まっしぐら」の米を酵素処理し、糖質を除去した高タンパク質試料を調製した。これらの試料の胆汁酸吸着性は「華さやか」で有意に高かった。KK-Ayマウスによる動物実験では、「華さやか」「春陽」投与群で総コレステロール、リン脂質、中性脂肪が減少傾向を示し、血糖値が春陽群、華さやか群で有意に低下した。 これらの結果から、プログルテリンは体内の脂質を吸着し、排泄することによって肥満を改善する効果が期待でき、プロラミンと同様にレジスタントプロテイン様作用を示し、その効果は麹酵素消化を受けた酒粕において大きいことが示唆された。
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