研究実績の概要 |
大豆種子に含まれるサポニンは多様な分子種の総称であり,化学構造の違いにより健康機能性や呈味性が大きく異なると報告されているが,不明な点が多く再評価が求められている。一方,大豆種子サポニン組成は,各種酵素の発現を制御する多様な遺伝因子の共優勢,優勢,劣勢遺伝の組み合わせで決定される。そこで本研究は,微量,不安定,単離精製が困難などの理由で構造解析できなかった各種サポニンの化学構造を,遺伝解析とTLC並びにLC-PDA/MS/MS分析に基づく総合判断で推定する新しい手法「プロファイル解析」の確立を目指す。 (1) 化学構造が異なる種々の既知サポニンを含む大豆種子アルコール抽出液を薄層クロマトグラフィー(TLC)並びにLC-PDA/MS/MS分析し,得られた機器分析データ(TLCバンドの色と溶出位置,LC溶出位置,UVスペクトル,MSとMS/MSフラグメントパターン)とアグリコン骨格並びに糖鎖配列との相関関係をデータベース化した。 (2) サポニン組成変異体で観察される新規サポニンを単離精製し,精密質量分析,赤外吸収スペクトル分析,核磁気共鳴スペクトル分析(1H-NMR,13C-NMR,DEPT,HMBC, HMQC等)等で解析した結果,これらの化学構造は全て,プロファイル解析で推定した結果と完全に一致した。 (3) 化学変異原Ethylmethan-sulfonate(EMS)処理で得られた大豆系統群からサポニン組成変異系統をTLCで一次スクリーニングした結果,多様な変異が発見された。変異体に含まれる未確認サポニンの化学構造はプロファイル解析で予測できるため,変異遺伝子の機能解析(推定)が容易となった。 (4) 今回得られた大豆サポニンに関するプロファイル解析のデータベースは,オレアナン型である大豆サポニン以外にも,各種トリテルペン型サポニンの化学構造解析に広く応用できる可能性がある。
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