研究課題/領域番号 |
15K07455
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉井 英文 香川大学, 農学部, 教授 (60174885)
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研究分担者 |
四日 洋和 京都学園大学, バイオ環境学部, 講師 (70707661)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 噴霧乾燥 / 機能性脂質 / 安定性 / 澱粉 / ガラス転移温度 / 粉末構造 / 空孔 / 乳化剤蛋白質 |
研究実績の概要 |
機能性食品粉末の粉末化手法として、油に疎水性機能性物質を溶解させる、または、機能性脂質そのものをコア物質として、乳化剤、賦形剤を用いて乳化溶液を作製後、噴霧乾燥により乳化機能性油噴霧乾燥粉末を作製する。本研究では、乳化油滴や粉末構造の複合化による機能性粒子の創製技術として、噴霧乾燥時に固体澱粉等を供給することによる粉末被覆噴霧乾燥粉末の特質について検討するとともに、乳化剤蛋白質を重合化させることによる機能性物質の安定化手法の検討を実施するとともに、噴霧乾燥粉末の構造、および賦形剤の選択による粉末内の物質移動制御の構築を目的としている。本年度は、乳化d-リモネン噴霧乾燥粉末を澱粉被覆することによるd-リモネンの物質移動に及ぼす影響、賦形剤マルトデキストリン(MD)のデキストロース当量(DE)を変化させた場合の噴霧乾燥粉末の空孔構造と表面油率の関係、乳化剤カゼインナトリウム(SC)の重合、含量変化によるコア物質スクワレンの安定化に及ぼす影響について検討した。 乳化d-リモネン噴霧乾燥粉末の賦形剤として、ガラス転移温度の低いショ糖、結晶性の高いラクトースを用いた場合、d-リモネンの徐放速度定数が澱粉被覆した場合、低湿度域で澱粉無被覆に比較して小さくなった。これは、澱粉被覆により吸湿が抑えられたためと考えている。噴霧乾燥粉末の賦形剤MDのDEを変化させた場合、噴霧乾燥粉末の空孔の存在率、空孔の大きさがDEの影響を大きく受けた。これは、乾燥時の水の移動速度がDE値に依存するためと考えられた。この空孔存在率、空孔の大きさは、粉末に包括される魚油の表面油率に大きく影響し、DE値が大きなMDを用いた場合のほうが、表面油率が小さいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) 魚油やイサダ油のような機能性脂質を含有する機能性脂質噴霧乾燥粉末内の機能性脂質の安定性に及ぼす粉末組成、噴霧乾燥条件について、項目毎に詳細に検討している。初年度の研究において、噴霧乾燥粉末に未包括の魚油の割合が粉末の魚油安定性に大きく影響することを明らかとした。(この結果を、Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 81 (4), 705-711. 2017に発表した。)この結果から、賦形剤マルトデキストリンのデキストロース当量DEの粉末構造、魚油の表面油率に及ぼす影響について検討した結果、噴霧乾燥粉末の空孔存在率、空孔の大きさと表面油率sに大きな相関がみられ、空孔の直径dvと粉末径の直径dpの比dv/dpとの間にs=0.42dv/dpの直線関係が得られた。この空孔の大きさは、DE値に大きく依存することを明らかとした。(論文投稿中) 2)噴霧乾燥粉末内のスクワレンの油滴の大きさが、粉末中のスクワレンの安定性に及ぼす影響について貯蔵温度を変化させて検討した結果、スクワレンの分解速度定数のアレニウスプロットより分解速度定数の活性化エネルギーと油滴の大きさに相関があることを明らかとした。 3)噴霧乾燥粉末の賦形剤の種類を変化させて、乳化d-リモネン噴霧乾燥粉末からのd-リモネン徐放速度を測定した結果、d-リモネン徐放速度が賦形剤のガラス転移温度に密接に依存していることを、恒温恒湿条件、湿度ランピング法の実験から明らかとした。噴霧乾燥粉末作製時に澱粉被覆した場合のd-リモネン徐放速度に及ぼす影響についても検討した。
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今後の研究の推進方策 |
1)機能性脂質、またはフレーバー噴霧乾燥粉末作製時に、澱粉のような固体粒子の付着が機能性脂質粉末の安定性に及ぼす影響についてについて検討する。 2)機能性脂質の乳化剤として、カゼインナトリウムを用いてきたが、異なる乳化剤として修飾澱粉やキラヤのような乳化剤を用いた場合の粉末特性に及ぼす影響について検討する。 3)乳化スクワレン、または乳化機能性脂質の安定性に及ぼす影響について、粉末構造、噴霧乾燥条件を変化させて作製した粉末の表面油率に及ぼす諸条件の影響について検討する。 4)噴霧乾燥粉末の物質移動を考える上で、粉末表面、賦形剤中の物質移動、油滴まわりの物質移動、油滴中の機能性物質の安定性について考慮し、各項目について影響を及ぼす因子について検討し、機能性脂質の安定性を評価するモデル構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定したより物品費、試薬等安く購入が出来たため、実験の進行状況において、残額が生じたため、次年度に計画的に執行するものとする。
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次年度使用額の使用計画 |
実験の進行状況に応じて計画的に使用する。
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