研究実績の概要 |
噴霧乾燥による粉末香料の作製において,噴霧乾燥時のフレーバー残留率に加え,粉末からのフレーバー徐放特性が重要視されている. 噴霧乾燥粉末時に澱粉を被覆した澱粉被覆粉末を作製することにより, フレーバー徐放速度を制御を企図した研究が行われている。しかし、澱粉被覆が粉末のフレーバー徐放挙動に及ぼす影響に関しての研究は殆どないのが現状である. 本研究では, 一定温度直線的湿増加条件下(湿度ランプ法)のd-リモネンの徐放挙動に及ぼす澱粉被覆の影響を明らかにすることを目的として,4種類の賦形剤を用いてフレーバー噴霧乾燥粉末を作製し,粉末からのフレーバー徐放挙動について検討した.賦形剤としてショ糖,α-ラクトース,またはマルトデキストリン(DE=25,19)(賦形剤),乳化剤として乳蛋白質加水分解物(エマルアップ,森永乳業)を用い,アスコルビン酸ナトリウム(抗酸化剤)を含む水溶液とd-リモネン含有中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(アクター M-2,理研ビタミン)を乳化し, 噴霧乾燥機(L-8型,大川原化工機製)を用いて各種d-リモネン噴霧乾燥粉末を調製した.噴霧乾燥中,噴霧乾燥機の壁面から澱粉を吹き付け,澱粉被覆粉末を作製した.噴霧乾燥粉末に澱粉を被覆することにより, 粉末本体への水分吸着を遅らせることができたためか湿度応答によるd-リモネン徐放が遅くなった.また,徐放開始湿度と各賦形剤のガラス転移温度に相関が見られた.この結果より,噴霧乾燥粉末に澱粉被覆することにより粉末からのフレーバー徐放速度を制御できる可能性が示唆された.また、噴霧乾燥時の澱粉被覆は、ガラス転移温度の低い賦形剤の使用や表面油率の低減に有用であることが示された。
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