研究課題/領域番号 |
15K07456
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本城 賢一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00264101)
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研究分担者 |
宮本 敬久 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70190816)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 凍結耐性 / レタス / GolS / VPE |
研究実績の概要 |
地球温暖化などを起因とする世界各地で頻発する異常気象(干ばつ、洪水など)は農作物に対し甚大な被害を及ぼし、わが国においても毎年のように、何らかの天候不良を起因とする作物の収穫減等が発生している。また、近年ではバイオ燃料に注目が集まり食糧用農地が燃料の原料用農地へ転換されるという現象も加わり、食料自給率がカロリーベースで40%に満たず多くの食糧を諸外国からの輸入に依存しているわが国において、食料品価格が高騰するという問題も発生している。このような問題は将来の世界的な食糧不足を予想させることから、我々はあらゆる解決策について検討し準備し続ける必要がある。 食材となる植物の低温耐性を向上させることで、栽培段階における環境適応性ならびに収穫後の貯蔵性を高めることは、将来予想される食糧不足問題の解決策の一つになり得る。私たちは、葉物野菜であるレタスが低温処理によってわずかながらもその凍結耐性を向上させることを見出している。低温応答性については、レタスの凍結耐性のみならずその低温貯蔵中の品質変化にも影響を及ぼすことが推察される。本研究では、レタスの低温誘導性遺伝子であり、凍結を含めた低温耐性向上に重要だと推定されるGalactinol synthase(GolS)遺伝子ならびに低温耐性に対して負の働きをすると推定されるVacuolar processing enzyme(VPE)遺伝子に着目し、GolS遺伝子については発現量を高め、VPE遺伝子についてはその発現抑制する様に改変することで、レタス(植物)の凍結耐性ならびに低温貯蔵性を向上させることを目的とした。今年度はGolS遺伝子ならびにVPE遺伝子のcDNAクローニングを実施した。GolS遺伝子については2種類のホモログ(GolS1,GolS2)、VPE遺伝子については1種類の遺伝子の塩基配列を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の初年度は、GolSならびにVPE遺伝子のcDNAの全鎖長取得を目的として、これまでに得られていた配列を基に5'-RACEならびに3'-RACEを行い、得られたPCR産物の塩基配列の決定を行った。その結果、GolSについては二つのホモログ(GolS1ならびにGolS2)を取得し、GolS1ならびにGolS2は、それぞれ、334アミノ酸をコードする領域を含む1433 bpならびに340アミノ酸をコードする領域を含む1418 bpからなることが明らかになった。さらに推定アミノ酸配列を基に相同性検索を行った結果、他の植物由来のGolSとの高い相同性が認められ、また、配列を比較したところ、ほぼ全鎖長が得られていることが確認された。そこで、得られた遺伝子が酵素として機能するかを確認するために、アミノ酸コード領域をPCRで増幅し、大腸菌発現ベクターpET17Xbへ組み込んだ。 また、VPEについても同様にRACEを行い、得られた産物の塩基配列を決定したところ、340アミノ酸をコードする領域を含む1282 bpであった。さらに推定アミノ酸配列を基に相同性検索を行った結果、他の植物由来のVPEと高い相同性が認められ、配列を比較したところ、5’末端領域の遺伝子がまだ得られていないことが確認されたため、現在、さらに5’-RACEを行った。 以上の様な進捗状況であり、ほぼ計画に基づいてほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)GolS遺伝子を大腸菌高発現ベクターpET17xbに導入を行う。これらは遺伝子発現後の組み換えタンパク質の機能確認の他、ポリクローナル抗体作製の抗原として遺伝子組み換えレタスでの発現確認に利用する予定である。同時に、得られたGolS1またはGolS2遺伝子を高等植物用発現ベクターpRI101-ANベクターに組み込み、アグロバクテリウムを介して、組み換えレタスの作出を行う。その後、GolSタンパク質の発現ならびに組み換えレタスにおける糖含量の測定を行い、凍結耐性の評価を行う。 (2)VPEに関しては、RNA干渉を誘導する構造でpRI101-ANベクターに導入し、組み換えレタスの作出を行う。その後、VPE発現抑制を確認し、凍結耐性評価を行う。発現抑制確認には、別途VPEを大腸菌で発現させ、それを抗原として作製したポリクローナル抗体を用いる。 (3)さらにGolS発現増強と同時にVPE発現抑制した組み換えレタスについても作製し、凍結耐性増強を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に必要な糖の分析に必要なHPLC用の示差屈折率検出器を所属機関の他研究室から借りることを予定していたが、予算に余裕が生じ次年度予算に繰り越すことで、新たに購入あるいはレンタルすることが可能になることため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度分と平成28年度分と併せて、研究遂行に必要な糖の分析に必要なHPLC用の示差屈折率検出器を新たに購入あるいはレンタル経費とする予定である。
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