研究課題/領域番号 |
15K07457
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小林 弘司 福岡女子大学, 文理学部, 講師 (00610255)
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研究分担者 |
石川 洋哉 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (00325490)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | SPRセンサ / 細胞毒性評価 |
研究実績の概要 |
本研究は, Surface Plasmon Resonance (SPR) センサによる細胞毒性の評価法を開発することを目的としている.従来の培養細胞を用いた毒素検出や毒性評価では,細胞の形態変化や死滅を観察する必要があるため,結果が得られるまで数日を要するが,SPRセンサでは細胞とアナライトの反応をリアルタイムに測定することが可能であるため,迅速に結果が得られると期待される.また,培養細胞を固定化したセンサチップでは,細胞内で起こるアナライトとの反応を細胞質の屈折率の変化として捉えるため,細胞の形態変化で評価していた従来法では得られなかった,細胞とアナライトとの相互作用を新たに発見することが可能となり,細胞毒性の新たな評価法の1つとして活用されると期待される. 平成27年度は、すでに細胞毒性が明らかとなっているベロ毒素とベロ細胞を用いて、アナライトと細胞の反応をSPR測定するための条件を確立した。まず、ベロ細胞のセンサチップ上での培養を検討した結果、PDMS(シリコンゴム)の中央を1cm2切り取りセンサチップに貼付け、センサチップ上で培養チャンバーをつくることで、液漏れすることなく培養が可能となった。さらに、細胞固定化量を増加させる方法を検討した結果,センサチップ金膜表面ををポリ-D-リジンでコーティングすることにより、固定化された細胞のSPR測定値が1.1degreeから1.4degreeに上昇することを確認した。このセンサチップに、病原大腸菌O157の培養上清を添加したがSPRシグナルは変化しなかった。このため、同培養上清をフラスコで培養したペロ細胞に添加し、細胞変化の顕微鏡観察を行なったがベロ細胞は死滅せず、培養上清中のベロ毒素量が十分量でなかったことが示唆された。今後は、精製されたベロ毒素を用いてSPRシグナルを測定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に用いたSPRセンサは、抗原抗体反応検出用に最適化された装置であったため、動物細胞を固定化し測定するために、関連器具の大幅な調整が必要であると考えていたが、フロー系の測定ではなく、バッチ測定することにより問題なくSPRシグナルを検出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きベロ細胞とベロ毒素の反応をSPR測定する方法の最適化を行う。さらに、平成28年度はHEp-2細胞の固定化やセレウリドとの反応についても検討を行う.これらの細胞は対応する毒素と反応した場合,最終的に細胞は壊死あるいは空胞化といった明確な形態変化が起こるため,SPR測定による評価法との比較が単純であると考えられる.また,細胞が毒素添加により受ける一次刺激から最終的な細胞の形態変化に至までの、どの段階からSPRシグナルが変化するのか検討できる点も興味深い.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に用いたSPRセンサは、抗原抗体反応検出用に最適化された装置であるため、動物細胞を固定化し測定するためには、装置を分解して測定部位をCO2インキュベータ内に設置する等、装置の改造費用が必要であると考えていたが、培養と測定を分けることにより本年度は装置を改造することなくSPR測定が可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に行なったSPR測定は短時間であったためCO2インキュベータ外に細胞を出しても細胞が障害受けなかったと考えられるが、さらにCO2インキュベータないで長時間SPRシグナルがモニタリングできるように、SPR装置のセンサ部位の分離等、装置改良費用に充填する予定である。
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