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2015 年度 実施状況報告書

ニバレノール系カビ毒の側鎖統一に向けた技術創成とその検出への応用利用

研究課題

研究課題/領域番号 15K07459
研究機関東洋大学

研究代表者

安藤 直子  東洋大学, 理工学部, 教授 (70360485)

研究分担者 木村 真  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (20261167)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードカビ毒 / トリコテセン / 食の安全
研究実績の概要

トリコテセンはFusarium属菌などによって生産されるカビ毒であり、食の安全を脅かすことが知られている。特に、日本の農産物にも汚染が見られるnivalenol (NIV)や4-acetylnivalenolは、感度の高い抗体が作成できずELISAが可能でないため、簡易な検出が困難である。そこで、本研究では、NIV系のトリコテセンを高感度抗体の存在する3,4,15-triacetylnivalenol (3,4,15-triANIV)に酵素的に一括変換し、ELISAで検出する系を構築することを試みた。C-3位、C-15位、C-4位のアセチル化を行うトリコテセン生合成酵素のうち、前者2酵素については既に大量発現が可能になっているため、C-4位アセチル化を担うとされるTRI7について、単離、性状解析、大量発現を試みた。
FLAG-Tagを結合したTRI7を発現させ、FLAG affinity gelを用いて精製したところ、精製前には存在したdeacetylaseであるTRI8が、精製後では取り除かれていた。そこでこの精製TRI7を使用して、性状解析を行ったところ、至適pHは7付近、至適温度は30℃で、Kmは43.4±5.8 μMであった。しかし、この酵素は非常に不安定で、4℃で一晩おくと完全に失活し、-30℃でおよそ3週間保存したところ、その活性が観測されなくなった。そこでこの失活したと思われるTRI7に、いくつかの酵素に対して安定化や活性の増強に寄与することが知られているBSAを加えたところ、BSAを0.5 mg/ml以上添加した場合、活性が安定的に確認できた。このことから、TRI7はBSA存在下で活性が増強されることが明らかとなった。また、冷凍保存よりも、凍結乾燥した後冷凍保存する方が、若干活性が保たれることがわかった。現在、グリセロールの添加や異なるバッファーを使用し、保存性を高めることを試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、NIV系トリコテセンを包括的に3,4,15-triANIVへ変換することを目指している。本年度、既にC-3位アセチル化とC-15位アセチル化をスムーズに行う系が構築でき、その条件を最適化することができた。残るはC-4位のアセチル化を担うTRI7による3,4,15-triacetylnivalenolへの変換のみが残されたステップとなっている。
そのため、TRI7酵素の大量発現と安定的な保存が、このプロジェクトでは重要な位置を占めているといえるが、この酵素は非常に安定性が低く、長期保存が難しい。現在、いくつかの方法を試し、保存法を検討していて、効果的な保存法を見いだしつつある。
また、TRI7酵素の安定的な発現や保存が難しい場合に備え、土壌微生物から類似の活性を持つ微生物の探索を行っているが、その補足の実験においても、既に複数の菌体をスクリーニングすることができた。以上の理由から、現在までの進捗状況は、おおむね順調に推移していると言える。

今後の研究の推進方策

TRI7をある程度効率的に発現させる系ができたものの、TRI7を安定的に保存する方法を構築できていない。そのため、今後はその保存法の構築を行い、NIV系トリコテセンを網羅的に3,4,15-triANIVに変換する系の構築を行う予定である。TRI7の大量発現と安定的な保存が達成できなかった場合は、並行して行っている土壌微生物のスクリーニングでられた菌体から、アセチル化酵素を得て、この系に組み込む予定である。

次年度使用額が生じた理由

現在使用しているHPLCが老朽化しており、この機器が必須のため、ポンプ部分の交換が必要な可能性が出てきている。そのため、それに必要な経費を次年度に使用できるよう、計画を変更した。

次年度使用額の使用計画

HPLCのポンプ部分の交換を行うと約129万円が必要である。そこで、この金額を備品とし、その他の金額を消耗品と出張費、論文の構成などに使用する計画である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] トリコテセン系カビ毒検出法の近年の動向2016

    • 著者名/発表者名
      田中彰、安藤直子
    • 雑誌名

      JSM Mycotoxins

      巻: 66 ページ: 63-72

    • DOI

      http://doi.org/10.2520/myco.66.63

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] FLAG抗体を用いたTRI7の精製と性状解析2015

    • 著者名/発表者名
      田中彰、杉江雄太、前田一行、中嶋佑一、島村拓実、吉田泰彦、木村真、安藤直子
    • 学会等名
      日本マイコトキシン学会第75回学術講演会
    • 発表場所
      庄内産業振興センター マリカ市民ホール( 山形県鶴岡市)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11
  • [学会発表] 非天然型を含む各種トリコテセンとそのC-3位アセチル化体の毒性比較2015

    • 著者名/発表者名
      佐川輝仁、佐藤弘基、田中希望、才川翔平、木村真、安藤直子
    • 学会等名
      日本マイコトキシン学会第75回学術講演会
    • 発表場所
      庄内産業振興センター マリカ市民ホール ( 山形県鶴岡市)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11
  • [学会発表] トリコテセン側鎖修飾活性を持つ土壌微生物の探索2015

    • 著者名/発表者名
      才川翔平、松井宏介、木村真、安藤直子
    • 学会等名
      日本マイコトキシン学会第75回学術講演会
    • 発表場所
      庄内産業振興センター マリカ市民ホール ( 山形県鶴岡市)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11
  • [学会発表] C-7位水酸化A型トリコテセンの生産方法の最適化と毒性の解析2015

    • 著者名/発表者名
      佐藤弘基、田中希望、田中彰、前田一行、相川俊一、吉田泰彦、木村真、安藤直子
    • 学会等名
      日本マイコトキシン学会第75回学術講演会
    • 発表場所
      庄内産業振興センター マリカ市民ホール ( 山形県鶴岡市)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11
  • [学会発表] トリコテセンC-4位アセチル化酵素TRI7の安定性の検証2015

    • 著者名/発表者名
      杉江雄太、田中彰、前田一行、島村拓実、木村真、安藤直子
    • 学会等名
      日本マイコトキシン学会第75回学術講演会
    • 発表場所
      庄内産業振興センター マリカ市民ホール ( 山形県鶴岡市)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11
  • [学会発表] トリコテセン側鎖修飾遺伝子Tri101 を導入した動物培養細胞のトリコテセン解毒活性の検討2015

    • 著者名/発表者名
      田中希望、佐藤弘基、田中彰、前田一行、木村真、安藤直子
    • 学会等名
      日本マイコトキシン学会第75回学術講演会
    • 発表場所
      庄内産業振興センター マリカ市民ホール ( 山形県鶴岡市)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11
  • [学会発表] ニバレノール生産菌の分子遺伝学-トリコテセン骨格の水酸化に関する解析2015

    • 著者名/発表者名
      前田一行、越野広雪、田中彰、杉浦亮介、東海武史、佐藤真之、中嶋佑一、金丸京子、小林哲夫、西内巧、藤村真、安藤直子、木村真
    • 学会等名
      日本マイコトキシン学会第75回学術講演会
    • 発表場所
      庄内産業振興センター マリカ市民ホール ( 山形県鶴岡市)
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-11

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公開日: 2017-01-06  

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