研究課題/領域番号 |
15K07462
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
小西 良子 麻布大学, その他部局等, 教授 (10195761)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アフラトキシン / アフラトキシンM1 / モノクローナル抗体 / バイオマーカー / デトックス |
研究実績の概要 |
食品に汚染物質中で、遺伝毒性を有する化合物は耐容摂取量が決められないため、たとえ基準値があっても極力摂取をしないことがFAO/WHO により推奨されている。カビ毒ではアフラトキシンがその一例である。そこで、アフラトキシンをモデルとして、積極的にヒトへの曝露を抑えるシステマティックな安全性確保手法を新規に開発することを本研究の目的とした。特にアフラトキシンB1の代謝物で牛乳等の汚染物質となっているアフラトキシンM1は乳児、幼児の摂取量が多いことが推測されるため、暴露期間も長く、発がん性のリスクも高くなる。本研究ではアフラトキシンM1(AFM1)をモデルとして、たとえ基準値以下の汚染であっても、ヒトへの汚染を最小限に留めるためのシステマティックな安全性確保手法を開発することとした。研究計画では①食品中の汚染濃度を超高感度かつ即時に検出②検出した食品は加工によりデトキシケーションを施す③バイオマーカーによるアフラトキシンの曝露評価を行う。 今年度は、①である超好感度かつ即時に検出する手法の基礎的研究を行った。いままで報告された高感度な検出法のほとんどは、抗原抗体反応を利用したものであり、使用する抗体の結合能の高さに依存して、感度が上昇することがわかっている。そこで、まず、特異的かつ高感度にAFM1を認識するモノクローナル抗体の作成を行った。つぎに作成抗体を用い、ELISA法およびbiolayer法の手法を用いて、牛乳中のAFM1測定法を構築し、それぞれの測定感度の比較を行った。その結果ELISAの方が感度が優れていることが分かった。さらにモノクローナル抗体のVH領域のシークエンスを解読することによって、Q bodyの手法を取り入れ新しいone drop測定法の検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、以下の2つのことを行った。 AFM1に結合性の高いモノクローナル抗体を樹立し、VH領域のシークエンスを明らかにする。(1)の抗体を用いて、すでに高感度測定法の手法として報告されているELISA法とBiolayer法をAFM1測定に応用し、その感度を比較検討した。 (1)では、AFM1の構造はアフラトキシン骨格(ビスフランおよびクマリン骨格)に水酸基が一つついていることから、ビスフランおよびクマリン骨格をそれぞれ認識するモノクローナル抗体の樹立を行った。抗原としては毒性のない、アフラトキシンB2(AFB2)およびG2(AFG2)を用いた。キャリアとしてKHLを結合させ、マウスに免疫を行った。その結果AFG2から作成されたモノクローナル抗体に、AFM1の強い結合能が認められたため、このクローンを用いてVH領域のシークエンスを解読することとした。 としては、ELISA法とBiolayer法によりAFM1を牛乳から検出するために構築した。ELISA法では、AFM1-牛アルブミンコンジュゲイトをコーティングし、AFM1抗体と標準品および牛乳中の汚染AFM1を反応させたものを加え、結合した抗体を抗マウスIgG抗体―HRPにより酵素反応的に定量する競合的ELISA法である。今年度確立したELISA法では、定量限界は0.009ng/mLであった。つぎに、one drop法として実用可能な測定法であるBiolayer法の確立を試みた。本手法は、細いガラス先の先端に、抗原または抗体を結合させておいて、目的物質が結合することによる層を光学電気的に定量する方法である。我々はガラス先端にAvidinであらかじめ修飾させておいてBiotin-AFM1を結合させた。そのガラス先端を、AFM1汚染牛乳または標準品の入った牛乳に浸し、数秒おくことで定量を行った。結果は、検出限界10ng/mLであり、ELISAに比べ非常に劣ることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度の結果から、one step法として構築したBiolayer法は、感度が低いことが示されたため、今後遺伝子改変抗体をも考慮に入れた改訂法を今後の課題とする必要が考えられた。”one drop”測定法は今後バイオマーカーの測定にも応用することから,初年度で得られたモノクローナル抗体を用いて、遺伝子改変を試み、AFM1の代謝物にも反応する抗体をQ body手法を参考に開発し、新しい測定法を確立する。 次年度は、アフラトキシンM1の食品加工中のデトキシケーションとして、食品添加物やヨーグルトによる減毒を用いる手法を開発する。研究期間内に、実際にマウスを用いたAFM1吸収阻害実験を行い、減毒性を検討する。 それと同時に AFM1のバイオマーカーを決定し、血液中および尿中に存在するAFM1、AFM1-DNAアダクト、AFM1-リジンアダクトへのモノクローナル抗体結合性を判断し、”one drop”測定法を用いて、バイオマーカー測定系の基礎研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の成果を国際学会で発表することを予定して予算を立てていたが、抗体作成が国際学会のアブストラクト締切までに予定通り進まず発表を見送った。その後国内学会での発表とした。そのため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
抗体作成は、その後順調に進み、年度末には2年目に国際学会で発表する予定である。
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