研究実績の概要 |
これまでの研究において、シジミエキス中にオルニチン(Orn)含有トリペプチド(アコルビン, β-Ala-Orn-Orn)を見出し、シジミを冷凍すると、1モルのアコルビン(β-Ala-Orn-Orn)が分解されて2モルのオルニチンと1モルのβ-アラニンが生成することを明らかにした。また、オルニチンとβ-アラニンを基質としてシジミから調製した酵素を作用させるとアコルビンが合成された。このことは、シジミの冷凍によるオルニチン生成には酵素が関与していることを示している。そこで、シジミから足を採集し、20mMリン酸カリウム緩衝液を加えてポリトロン処理した後、遠心分離により粗酵素溶液を調製し、DEAE-Sephacelイオン交換クロマトグラフィーに供した結果、0.32M NaCl濃度にアコルビン合成酵素活性がみられた。活性画分をSephacryl S-300ゲルろ過クロマトグラフィーに供し、各フラクションのアコルビン合成活性を調べたところ、Fr.No.49に溶出することが分かった。分子量既知の票品の溶出位置から作成した検量線から、分子量は約190000と計算された。次に、Fr.No.49をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(10-15%グラジエントゲル)に供した結果、45kDにバンドが観察された。ゲルろ過の結果と合わせて考えると、アコルビン合成酵素は分子量45000の4量体と思われる。さらに、汽水域に生息するヤマトシジミと淡水域に生息するセタシジミについて、冷凍前後におけるアミノ酸組成を比較したところ、ヤマトシジミに見られたオルニチン及びβ-アラニンの増加がセタシジミには見られなかった。このことから、ヤマトシジミにおけるアコルビンの分解は、冷凍処理以外に塩濃度の変化においても起こるのではないかと考えられた。今後、アコルビンの分解と塩濃度との関連について検討していく予定である。
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