研究課題/領域番号 |
15K07467
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 歩美 九州大学, 農学研究院, 助教 (70706845)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炭素配分 / 熱帯雨林 / 幹呼吸 / 細根生産量 |
研究実績の概要 |
アジア熱帯雨林の分布する多くの地域では季節的な乾期が存在しない一方で、展葉や開花などのフェノロジーは不規則に起こる乾燥と関連していることが分かっている。本研究は、明確な季節が存在しないボルネオ島熱帯雨林において、貯留炭素を考慮したうえで、樹木のフェノロジーを介してバイオマス生産と呼吸に利用される炭素量が各器官において季節的にどの様に変動するのかを明らかにすることを目的とする。この目的を達成するために、これまで、ボルネオ熱帯雨林において、異なる土壌水分環境下における幹、根の生産量および呼吸量を計測してきた。 2018年度は研究休止期間があったため、計画通り調査を行えなかったが、1回は調査を行うことができ、土壌水分の多い環境下でのデータを取得することができた。今後も引き続き、異なる土壌水分下での調査を行う予定である。一方で、細根生産量の推定手法に関する検討を行い、論文として発表することができた。その内容とは、細根生産量を推定する際によく用いられるイングロースコア法は、一定期間中に枯死・分解される細根も存在するため、その分の過小評価が問題とされてきたが、本研究では、それを定量する新手法を初めて熱帯で適用し、細根生産量を推定することができた。その結果、枯死根の寄与率は20%程度であり、無視できない量であることが明らかとなった。また、埋設期間は1年以上が望ましいことが明らかとなった。細根フェノロジーを知るためには、土壌にアクリルボックスを埋め、定期的にそのボックス面に生育する土壌断面をスキャナで撮影し、細根動態を調べるスキャナ法が提案されている。本研究ではスキャナ法も同時に利用しているため、今後、細根フェノロジーはスキャナ法とイングロースコア法、シーケンシャルコア法を用いて明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、1.幹呼吸速度は土壌水分と正の相関があること、2.幹呼吸速度を林分スケールに拡大する際、胸高で測定した値を樹冠部分まで適用してもそれほど大きな誤差を生まないこと、3.細根生産量を推定する際によく用いられるイングロースコア法は、枯死根の寄与率は20%程度であること、埋設期間は1年以上が望ましいこと、4.スキャナ法の適用方法の検討に関する論文を発表することができた。したがって、炭素配分を調べるにあたり重要な知見を得ることができている。また、研究休止期間があったものの、研究期間が2年間延長されており、調査回数は2015年以降7回に及んでおり、様々な土壌水分状態でのデータが蓄積されている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度もこれまで通りの調査を継続して行う。同時に、1.細根バイオマス動態と環境条件の関係、2.細根呼吸速度と環境条件の関係、3.土壌呼吸速度と環境条件の関係、の解析を行い、炭素配分全体の土壌水分等による環境応答を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究休止期間があったため、計画通りに調査を行うことができなかった。2019年度は2回の調査を行い、予定通りに調査を終える予定である。
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