研究実績の概要 |
前年度後半に採取した葉のサンプルについて、必要な前処理を行ない、リグニンの定量を行なうとともに、一部については葉の分解実験を実施した後、同様にリグニンの定量を行ない、その分解挙動を比較した。まず、前年度までに研究が進んでいたミズナラに加え、カラマツ、シナの葉について、メトキシ基の定量とニトロベンゼン酸化法を組み合わせた新規手法により、リグニンの定量を行なった。その結果、いずれもリグニン含有率は9-12%程度であり、予想よりも低い値であった。続いて、ミズナラとトドマツについては野外での葉の分解実験を行なったが、分解落葉中のリグニンの減少傾向については一定の知見を得ることができた。すなわち、これまでに実施済みのミズナラ(広葉樹)だけでなく、トドマツ(針葉樹)においても、葉全体の重量減少とリグニン含有率の減少傾向とは挙動が類似しており、特にリグニンが他の成分に比べてきわめて難分解性であるとは言えないことが、改めて示唆された。ただし、室内での分解実験については、当初計画の遅れを取り戻すには至っていない。そのため、本研究の実施期間を1ヶ年延長し(既に申請、承認済み)、最大の課題である、落葉の生分解を規定するとされるリグニンの影響について、室内実験で検証することにより、体系的な知見を得る予定である。なお、今年度中にこれまでの研究成果をまとめ、木材・紙パルプ分野関連の国際会議(第19回 International Symposium on Wood, Fiber, Pulping Chemistry, Port Seguro [Brazil], Aug.28-Sep.4, 2017)において、報告している。
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