研究課題/領域番号 |
15K07473
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
阿部 晴恵 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60462272)
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研究分担者 |
陶山 佳久 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60282315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォッサマグナ要素植物 / 再移入 / プレート移動 / ヤブツバキ / ヒサカキ / コメツツジ |
研究実績の概要 |
フォッサマグナとは「大きな溝」を意味し、糸魚川から静岡構造線東側の地溝帯に名付けられたものである。この地溝帯の南半分の地域には、この地域に分布が限られた植物が数多くある。そのため、日本の植物区系を論じる際には、この地域をフォッサマグナ地区として区別し、これらの植物をフォッサマグナ要素植物という。これらの種は第四紀の激しい気候変動のもとで、火山活動によるオープンな環境で分化した種類と考えられているが、南部フォッサマグナ地域はプレート移動によって火山島が本州に何度も付加させることで成立している。つまり、島への移入、種分化、再移入プロセス、そして、再移入後の相互作用といった一連のプレート運動に基づき、南部フォッサマグの生物群集が成立したと考えられる。そこで本研究では、本プロセスを考慮した分子系統地理学的研究を行うことで、フォッサマグナ要素植物の種分化や適応進化の歴史解明を行うことを目的とした。対象は種子散布様式の異なる3種(ヒサカキ、ヤブツバキ、ハコネコメツツジ)とした。 分散能力の異なる広域分布種の2種(ヒサカキ・ヤブツバキ)は、本州と伊豆諸島間での遺伝子流動が起こっており、本仮説を支持する遺伝的構造が示されなかった。一方で、ハコネコメツツジでは仮説を支持する可能性が示された。このため、ハコネコメツツジについてはRAD-seq を行いったところ、伊豆諸島の集団では、本州集団と比較して遺伝的多様性が低く、さらに集団間の固有性が高いことが示された。さらに葉の形態が3つに分かれた遺伝的構造と一致することも示された。今後は集団のデモグラフィー解析を行うことにより、地質学的推定と、遺伝学的な推定が一致するかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は対象種のMIG-seqやRAD-seqを行うことにより、遺伝的構造や集団間の遺伝的分化を推定することが出来た。さらに、形態計測を行うことにより、表現形質と遺伝的構造についての考察を行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、MIG-seqでは遺伝的構造があまり観察されなかったヤブツバキのRAD-seqを行うことにより、コメツツジ類と合わせて、より詳細な集団のデモグラフィー推定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月分の旅費の支払いが次年度になったこと。また、今年度はRAD-seq解析の受託先の次世代シーケンサーの使用状況が混雑しており、来年度に解析を行うことにしたため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度行えなかったRAD-seq解析のために用いる予定。
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