研究実績の概要 |
平成29年度は、施工後12年経過した雪上木密度が異なる3箇所のプロットで、木製杭の支柱にかかる積雪荷重を測定し、比較した。 雪上木密度が低い場合に比べて高い場合は、積雪荷重は7割程度に低減していた。雪上木が積雪荷重を分担し、積雪グライド量を5割程度に抑制するとともに、木製杭への積雪荷重の分担を減らしたものと推察された。以上のことから、雪上木が増えることで斜面積雪が安定し、積雪荷重の負担が減り、木製杭は不要になるものと考えられた。すなわち、木製杭は当初の役目を終え、成育した植栽木により斜面積雪は安定し、成林につながることが期待できる。 研究期間全体を通じての成果は次のとおりである。積雪グライドにより樹林化が阻害された、最大積雪深2mまでの起伏の少ない平衡な急傾斜地において、木製杭によって雪崩防止林の造成が可能であるか検討した。調査は、このような立地条件で木製杭(防腐薬剤を加圧注入したもの)を斜面傾斜角35度、40度に対してそれぞれ450基、620基/ha設置すると同時に、樹木植栽して10年程度が経過した5箇所の林分を対象に3~5年間にわたって行った。そして、木製杭の残存率(当初の設置数から腐朽・損壊したものを除いて求めたもの)と、スギ植栽木のうち雪上直立木(樹高が最大積雪深の2倍以上で直立状態のもの)となった本数密度について経時的に評価した。その結果、木製杭の残存率は9年経過で約8割に,12年経過で約4割になると推定された。それに対して、スギ植栽木は中位の地位に相当する樹高成長を示したことにより、植栽密度2,500本/haにおいて、雪上直立木が9年経過で1,000本/ha(斜面積雪を安定させるのに必要な本数密度)に、12年経過では1,500本/haに達すると推定された。以上のことから、本調査地のような条件において、木製杭による雪崩防止林の造成が可能であることを明らかにできた。
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