ツクバネのホスト選好性を明らかにするため、昨年度新たに開発したDNAバーコーディングの手法によらないホスト特定方法を利用し、根の抽出液の吸収スペクトルの特性によって、ツクバネのホスト選好性を明らかにした。ツクバネの根系を掘り出し、ホスト候補木の樹種ごとの根の存在比と、ツクバネの樹種別の寄生箇所数を比較することで、ホスト選好性を定量的に評価した。ヒノキ-ツブラジイ林に生育するツクバネ4個体の根とホスト候補木根を土壌ごと採取し、ホスト根に固着した状態の寄生根約800個を得た。DNAバーコーディングおよび根抽出液の吸光度によりホスト樹種を特定した。細根の寄生箇所数は、ツクバネ3個体はヒノキに、1個体はツブラジイに有意に偏っていた。ツクバネは個体サイズに関わらず、細根に小さな寄生根を形成している場合が多く、極端に太いホスト根に寄生根が固着している様子はほとんど観察されなかった。
昨年度まで実施してきた目視やナイトビジョンゴーグルを用いたツクバネの果実にマーキングした果実散布距離の探索方法の有効性を検討するため、人工的な環境で、目視でマーキングした果実の発見率と、マーキングしなかった果実の発見率を比較したところ、マーキングした果実の発見率は90%を超えたのに対してマーキングしなかった果実のそれは40%弱であった。夜間にブラックライトを用いて実施してきた果実の散布距離の測定方法の高い有効性が確認された。また、果実の二次散布の可能性について検討するため、自動撮影装置によって動物による果実の持ち去りについて調査を行ったが、果実の移動は確認されなかった。 果実の散布に有効な風速を明らかにするため、実験的に果実に風をあて、果実が枝から離脱するのに必要な風速を測定し、平均で4.6m/sの強さが必要であること確かめた。これにより、果実散布には一定程度の強い風が必要であることがわかった。
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