研究課題/領域番号 |
15K07478
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 一清 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (40262430)
|
研究分担者 |
井上 昭夫 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (80304202)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 3Dカメラ / テンプレートマッチング / 自動回転雲台 / ステレオ画像 / 3次元計測 / 樹幹表面積 |
研究実績の概要 |
本研究では、ステレオ撮影した超高解像度(ギガピクセル)パノラマ画像(複数の望遠画像を合成したパノラマ画像)を利用した簡易森林計測システムの開発を目的として、今年度は以下の3点について研究を遂行した。 1)基盤となる望遠ステレオ画像によるプロットスケールの3次元計測技術の確立:民生用3DカメラFinePix REAL 3D W3(富士フィルム社製)を用い、従来行っていたズーム無し(広角)及び最大ズーム(望遠)での画像を利用し、提案したテンプレートマッチング手法を利用したカメラから立木までの距離推定精度について比較・検証を行った。その結果、広角よりも望遠において対象立木を検出し易く、また40m程度までは高い精度で距離推定可能であることが示唆された。また、試験的に自動回転雲台(Gigapan EPIC100)に3Dカメラを取り付け、立木位置図の作成及び現地データとの比較を行い、プロットスケールの3次元計測における今後の課題について検討を行った。 2)簡易3Dカメラ計測システムの開発:Sony社製のレンズスタイルカメラ(DSC-QX30)2台を利用して、3Dプリンタにより簡易3Dカメラの設計・制作を行い、その有効性を検証した。その結果、テンプレートマッチングによる距離推定における誤差は、主に垂直方向の対応点抽出誤差によるものと考えられた。これは、テンプレートマッチングでは領域を単位とした近似領域の抽出方法であり、その中央座標を両画像の対応点として距離推定を行ったが、垂直方向の視差は無視した方が良い結果が得られる可能性が示唆された。 3)林分密度と樹幹表面積間の関係に関する理論的考察:過密林分における単位面積あたり樹幹表面積合計は林分密度によらず一定となること(「樹幹表面積の保存則」とする)を発見し、これに基づく自己間引き指数についての理論的的考察を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、ズーム機能の有効性が明らかとなったことにより距離推定精度の向上が達成できた。また、簡易3Dカメラ計測システムの試作及び自動回転雲台による立木位置図作成手法の試験研究を前倒しで行ったことにより、テンプレートマッチング手法の様々な課題や、その解決方法の知見が得られた。一方、調査プロットの設置は順調に進んでいるが、現地調査及び3Dカメラ計測は簡易3Dカメラ計測システムの試作を前倒しで行ったため、次年度に予定を変更した。しかし、追加の検証プロットも含め、設置及び簡易3Dカメラ計測システムの評価・検証に好条件の調査地も今年度に確保できた。以上のように、予定が一部前後したが、現状のところ全体としては当初の計画どおりに研究が進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定を一部変更し、以下の項目を重点的に実施する予定である。 1)林分調査 平成27年度に選定した調査地において、様々な因子(地形・立木密度等)及び撮影方法(点数・位置・間隔等)・撮影条件(天候等)による測定精度及び立木抽出率への影響を評価するため、検証プロットを設置する。また、試験プロット中央及び検証プロット中央において、平成27年度同様に望遠撮影を行い、その後同位置で全天空画像が撮影可能なデジタルカメラ(平成27年度購入物品)による撮影を同時に行う。 2)立木位置推定精度の検証及び胸高直径・樹高推定手法の検討 撮影位置からの距離と立木位置の計測精度の関係を検討し、本手法の適用可能限界を評価するとともに、胸高直径自動計測手法について検討を行う。このため、抽出木の根本位置及び胸高位置の推定とともに、胸高位置における樹幹形状の認識手法について開発を行う。また、樹幹形を推定し、それをもとに樹高推定を行う手法の可能性について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度において、当初使用を予定していた3Dカメラ(FinePix REAL 3D W3:富士フィルム社製)が発売中止となるなど、民生用3Dカメラが国内で調達不可能な状況となった。そのため、現有の3Dカメラでの研究と同時に、その代替となる機材の開発が必要となった。平成27年度は、通常の民生用カメラ2台を組み合わせた簡易3Dカメラ計測システムの開発を前倒しで行い、調査プロットにおける3Dカメラ計測は最小限に止め、新たに名古屋大学構内に設置した試験地おいて、試作した簡易3Dカメラ計測システムのテストを繰り返した。そのため、当初予定していたカメラ機材や自動回転雲台等の購入を一部延期し、現地調査も期間短縮となったため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度において、簡易3Dカメラ計測システムの開発で十分な成果が得られたため、次年度使用額は簡易3Dカメラ計測システムに必要な機材や自動回転雲台等の購入、及び平成27年度に設置した調査プロットにおける3Dカメラ計測の実施に使用する予定である。
|