研究課題/領域番号 |
15K07479
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
板谷 明美 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (70447861)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 木質バイオマス / リター / 物質循環 / 持続的利用 |
研究実績の概要 |
わが国の林業は停滞しており,国土の約70%を森林が占め,その40%が人工林であるにもかかわらず,木材自給率約30%という世界的に見ても驚くべき状況にある。全国で木質バイオマス発電所の建設ラッシュが起きる中,森林生態系の物質循環を考慮した間伐率で収穫された間伐材を使用することは,持続的で安定的な木質バイオマスを供給する上で絶対的な条件である。本研究では,落葉落枝量から推測される窒素循環に着目して立地条件に適合した間伐率を明らかにし,供給可能な木質バイオマス量を定量的に推定することを目的とする。 この目的の達成のために本研究では,スギ林分を対象に(1)リタートラップを用いて落葉落枝量を測定し,その結果を用いて窒素循環に着目した立地条件に応じた適切な間伐率を明示する。さらに(2)適切な間伐率と航空機搭載型LiDARで測定した林冠面と地表面の3次元データを用いて算出される木質バイオマスとして利用可能な資源量の分布を広域的に地図化する。そして(3)地図化した資源量の分布図を用いて持続的で安定的な木質バイオマス供給システムのための路網配置を検討する。 初年度は,主に(1)についての準備作業を行った。6月~9月に調査地の選定を行い,9月~11月に三重県内の3地域(三重大学演習林,美杉町竹原,大台町島谷)の間伐区と無間伐区に計36個の10m×10mの方形の調査プロットを設置し,プロット内の毎木調査(樹種,本数,胸高直径,切り株数)を行った。各調査プロットの中心にリタートラップを設置し,冬季を除く10月,11月,3月分のリターを回収し,その重量の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三重大学演習林だけでなく,他の地域にもリタートラップを設置でき,当初予定していた標高や斜面方位,立木本数密度によるリターの差を検討できる環境が整った。さらに三重県内に15ヶ所のリタートラップの設置を予定しており,当初予定していた数量のリタートラップの設置ができる予定である。現在測定が終了しているプロットにおいては,林分ごとにリター量に特徴的な結果を得られている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,リターの回収・測定を行い,林分環境との関係を明らかにする。 28年度は,さらに適切な間伐率により算出される立木材積および枝条・根株材積の広域分布の図化を目標に,立地条件に応じた適切な間伐率を地図化し,それにもとづいて航空機搭載型LiDARの3次元データを活用して広域的な木質バイオマス量を推定する。そして,適切な間伐率から推定される木質バイオマスとして収穫可能な量を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
衛星画像は,最新のものを利用したいため,主たる解析作業に合わせて昨年度は購入を見送った。他の調査道具についても,調査の時期に合わせて最新のものを購入するため,昨年度は購入を見送った。また,国際学会への参加を予定していたが,他の学会と日程が重なり,参加することができなかった。昨年度は9月から調査を開始したため人件費・謝金,その他についての使用が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度より調査プロットが増加し,分析量も増えるため,人件費・謝金,その他の経費を昨年度より多く必要とする。今年度は,主たる解析作業としてリモートセンシングデータの利用を開始するので,最新の衛星画像を購入する。また,各調査地において,より詳細な調査(光環境など)を行うため照度計など測定機器も購入する。さらに,マレーシアにおいて開催される国際学会において,これまでに得られた本研究の成果を発表するための旅費を使用する。
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