研究課題/領域番号 |
15K07481
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
竹松 葉子 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (30335773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヤマトシロアリ属 / 分類 / 生物地理 / 琉球列島 / 分子系統解析 |
研究実績の概要 |
シロアリ類の分類の難しさは、個体変異が大きく成虫個体の入手が困難であることや飼育実験が行えないことなどに起因している。そのために、本研究では、遺伝子や体表炭化水素を分析し、飼育や形態観察無しに種の特定や形態変異を客観的に記載することから着手した。 昨年度の16SrRNA領域での網羅的分析結果から琉球産ヤマトシロアリ属は南琉球・中琉球・北琉球の個体群に分けられることがわかった。そこで本年度は、さらに解析領域を増やしミトコンドリア16SrRNAおよびCOⅡ領域、核のITS1領域を用いた分子系統解析を行い、分類体系の再検討を行うとともに、琉球列島への分布形成の推定を行った。調査は、分布調査が十分になされていない沖縄本島とその周辺部の島、与那国島において行った。解析の結果、以下の点において従来の分類体系とは異なる可能性が示唆された:R. s. speratusおよびR. s. leptolabralisは亜種に分けることができない; 沖永良部島の一部のR. amamianusはR. okinawanusに含まれる; R. miyatakeiは2亜種に分けられる; R. kanomnensisは2亜種に分けられる;伊是名島の一部のR. okinawanusはR. okinawanusとR. miyatakeiの中間系統が含まれる; 宮古島にはR. okinawanusとR. yaeyamanusが生息している。また新知見として、小笠原にはR. speratusのほかにR. okinawanusが、与論島、座間味島、渡嘉敷島、久米島にもR. okinawanusが分布していることが分かった。また分岐年代推定の結果、27Ma-5Maの前期鮮新世までに現在の分類体系の集団構造ができていたことが示唆された。これらの成果について国内の学会で発表し、意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプリングおよび遺伝子解析については計画通りに達成できた。国際昆虫学会や日本昆虫学会での成果発表と意見交換も行うことが出来た。体表分析および生態観察が行えていないが、おおむね、計画通りに遂行されていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①サンプリング計画:当初の計画通りのトカラ列島から奄美大島の北琉球を予定している。シロアリの分布の大きな境界線が存在するであろうトカラ列島から奄美大島を調査することで、日本全域でのヤマトシロアリの分布概要が明らかになると思われる。 ②遺伝子解析:これまでにミトコンドリア16SrRNA、COIIおよびITS、28S領域での分析方法が確立できたので、さらにこれらの領域において上記調査地点の解析を加え、DNAバーコード技術を用いての種の区別を行う。現在すでに、最適な制限酵素の選定に着手している。 ③形態観察および体表炭化水素分析:体表炭化水素分析および生態的特徴調査を初年度から行う予定であったが、体表炭化水素多様性は遺伝的多様性の概要を明らかにした後に実施する方が効果的であると考えて、体表分析はH29年度以降に行うこととする。形態的多様性と遺伝的多様性との相違を明確にするために、形態観察を先に行う。 ④成果発表:日本昆虫学会および中国支部会で発表を行う予定である。現在協力関係にある台湾の研究者とともに台湾個体群の分析も行っている。さらに、現在までの結果をまとめて論文にする予定である。
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