本年度に調査したデータを追加した現地調査データおよび森林生態系生物多様性基礎調査データを用いて、スギ・ヒノキ・カラマツの地位指数推定モデルを改良し、検証を行った。どの樹種についても平均推定誤差が3 m程度となり、局所的に大きな誤差を生じる点はあるものの、比較的信頼できる地位指数推定モデルを開発することができた。このモデルを用いて現在気象および将来気象条件における地位指数を推定した。スギおよびヒノキについては、九州および四国を対象とし、カラマツについては北海道道東地域を対象とした。気候変動の影響を評価したところ、気温の上昇にともない地位指数が上昇する場合が多かったが、九州南部のスギについては気温上昇にともなう呼吸量増加によって成長が悪化することを反映して地位指数が下がる場所が多く見られた。九州および四国においてスギ・ヒノキの樹種間比較を行ったところ、対象地においては大部分でスギの成長が良く、造林樹種転換を考慮すべきような場所はほとんど存在しなかった。ただし、ヒノキに換えてスギを植栽するのが有利になる場所、スギに換えてヒノキを植栽するのが有利になる場所がわずかではあるが存在した。現在の主要樹種であるスギ・ヒノキ・カラマツを対象とする場合、植栽樹種転換は有効な温暖化適応策となりえない可能性が示唆された。また、本年度は先生の内容からさらに進んで、成長モデルと伐出コストモデルを組み合わせて収益性についても検討を行った。
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