研究課題/領域番号 |
15K07486
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
田中 恵 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (40401301)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 針葉樹人工林 / 外生菌根菌 / 埋土胞子 / 根圏バクテリア / 境界 |
研究実績の概要 |
針葉樹人工林に外生菌根性広葉樹を更新あるいは植栽する際に問題となるのが、アーバスキュラー菌根性樹種であるスギやヒノキが長期間生育している林分に、感染可能な外生菌根菌が十分に存在しているかという点である。こうした林分では外生菌根菌の感染源として、近傍の外生菌根性広葉樹の根外菌糸だけでなく、子実体から散布される埋土胞子の存在が重要であると考えられる。そこで本研究では周辺広葉樹によるヒノキ人工林への外生菌根菌埋土胞子の供給を調べ、広葉樹導入時において外生菌根感染に埋土胞子がどれだけ寄与できるかを明らかにすることを目的とする。 東京農業大学奥多摩演習林及び近隣のヒノキ人工林と広葉樹林において、境界をまたぐようにラインを複数設定し、124地点から土壌を採取した。乾燥させ根外菌糸による感染可能性を排除した後に無菌播種した芽生えを育成させ、菌根菌の釣り上げを行った。形成した菌根からDNA抽出、ITS領域のPCR増幅を行い、シークエンスにより塩基配列からBLASTプログラムを用いて菌根菌種を推定した。その結果、実生の菌根形成率はヒノキ林内と比較して、広葉樹林内のほうが有意に大きくなった。ヒノキ林内で見られた菌根菌種はCenococcum geophilumとRhizopogonの2種が大半であり、菌根形成個体は境界から10m先までのサンプルに集中していた。菌核による外生菌根菌種の侵入がある程度可能ではあるものの、境界から離れた場所では菌根形成が困難である可能性が考えられる。また、周辺広葉樹のうち、優占するミズナラについて実生の菌根菌種について調べたところ、当年生実生のほぼ全てが菌根菌に感染していた。菌種はRussula、Helotiales、Tomentella、Sebacinaなどに属しており、周辺広葉樹林内には一般的に見られる外生菌根菌リソースが存在していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に一部修正点はあるものの、基本的には当初の予定どおりに研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
予定している研究項目を実行する。特にヒノキ人工林群状伐採地に植栽された広葉樹の外生菌根菌群集について、植栽木から細根と土壌を採取し、菌根菌種を推定する。土壌は乾燥後釣り上げ試験に用いて埋土胞子が試験区に存在するか調べる。また、アーバスキュラー菌根と外生菌根の根圏及び非根圏土壌からそれぞれバクテリアを分離し、感染様式の異なる菌根圏では存在するバクテリア群集に違いがあるか調べる。いずれの項目についてもある程度の結果が出ており、今後はより詳細な解析が必要になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な研究用消耗品費を確保する必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に必要な研究用消耗品を中心に、調査や成果発表に必要な旅費を確保する。
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