針葉樹人工林に外生菌根性広葉樹を導入する際に問題となるのが、アーバスキュラー菌根性樹種であるスギやヒノキが長期間生育している林分に、感染可能な外生菌根菌が十分に存在しているかという点である。こうした林分では外生菌根菌の感染源として、近傍の外生菌根性広葉樹の根外菌糸だけでなく、埋土胞子の存在が重要であると考えられる。 ヒノキ人工林と広葉樹林の境界をまたぐようにラインを設定し、採取土壌を乾燥後無菌播種した実生を育成させ、埋土胞子の釣り上げ試験を行った。その結果、実生の菌根形成率はヒノキ林内と比較して、広葉樹林の方が有意に大きくなった。また、菌根形成個体は境界から10m先までのサンプルに集中しており、境界から離れた場所では菌根形成が困難である可能性が考えられる。 ヒノキ人工林を群状伐採後に植栽した広葉樹について、近傍成木からの感染がない状況下での菌根菌種を調べたところ、共生する菌種は樹種ごとに異なっていた。また、地上部成長の極端に小さい個体は菌根形成がみられず、菌根菌感染が植栽木においても重要な成長因子となっていることが考えられた。さらに、実生を用いた埋土胞子の釣り上げ試験を行ったところ、菌根形成のない実生は殆ど全てが枯死したことから、このような場所では菌根形成の可否が実生の生残に影響を及ぼす可能性がある。 カラマツ人工林について、成木と実生の菌根菌相を比較した結果、成木と実生あわせて8属の菌根菌が検出された。実生は採取したすべてに菌根菌の感染が確認され、菌根数と乾重量の間に正の相関が見られた。また、カラマツ成木の根圏バクテリアは根圏土壌の群集とは有意に異なっていた。菌根タイプの異なるミズナラとヒノキについてそれぞれ根圏バクテリア群集を調べた結果、ヒノキ根圏に対してミズナラ根圏のバクテリア群集の多様性は高く、外生菌根菌の感染が根圏バクテリア群集に影響を与えている可能性が示唆された。
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