ナガマドキノコバエ類(以下ナガマド類)による菌床シイタケ被害の防除に役立てる上で、野外でのナガマド類の分布状況と生息環境を明らかにし、その知見を利用することが肝要となる。そこで、国内外のナラ枯れ被害木を主な対象として害虫種フタマタナガマドキノコバエ(以下フタマタ)とリュウコツナガマドキノコバエ(以下リュウコツ)の在不在を調査した。国内でナラ枯れ被害が起こった 8 県(山形県、富山県、静岡県、愛知県、滋賀県、京都府、山口県、大分県)の被害地で調査を行い、捕虫網を使って成虫の採集を行った。その結果、2 種を捕獲したが、害虫種であるリュウコツとフタマタは含まれなかった。韓国の菌床シイタケ栽培施設で害虫種フクレナガマドキノコバエ(以下フクレ)の成虫と幼虫を採集した。韓国および中国の山林内で 3 種を採集したが、害虫種は含まれなかった。これらのナガマド類成虫が採集された環境は、ササ類等下層植生が発達した、緩やかな谷地であった。国内のナラ枯れ被害木にハカワラタケ、カワラタケ、ウチワタケなどが生えていることを確認したが、これらの子実体上にナガマド類幼虫の存在は確認されなかった。また、成虫が採集された山林内の林床に散乱した枯れ枝下面を観察したが、幼虫の存在は確認できなかった。 フクレは中国の山林、沖縄・熊本の山林で採集されている。韓国の山林に分布し、菌床シイタケ施設にも広がっている可能性がある。国内外の山林内でのリュウコツの分布はまだ確認されていない。したがって、国内各地の菌床シイタケ栽培施設で発生しているリュウコツの由来は不明である。
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