シイタケなど食用害虫であるリュウコツナガマドキノコバエとフタマタナガマドキノコバエの国内外の分布を調査した。昨年度までに成虫および幼虫を得ることのできたナラ枯れ被害地の愛知県猿投山と奈良県春日山、および照葉樹原生林の福岡県立花山の調査地で5月から10月までの定量調査を行った。それぞれの調査地に2~4km のトランセクトを設けて、捕虫網による成虫の捕獲と落枝上の幼虫の探索を行った。その結果、8月の猿投山でハサミナガマドキノコバエ4頭、7月の春日山でトゲナシナガマドキノコバエ2頭とフタオノナガマドキノコバエ1頭、7月の立花山で92頭のトゲナシナガマドキノコバエを採集した。6月の春日山と10月の猿投山の落枝上からそれぞれナガマドキノコバエ類の幼虫1頭を採集した。猿投山の幼虫からハサミナガマドキノコバエの成虫1頭を羽化させた。春日山の1頭は羽化しなかったため未同定である。ナガマドキノコバエ類はこれまで野外では多く採集されていなかった。しかし、特定の時季に集中的に羽化し繁殖すると考えられる。落枝などの腐朽木に生息するこれらのキノコバエ類の生息環境について第65回日本生態学会大会でポスター発表を行った。中国浙江省のシイタケ栽培地2戸を訪問し、内1戸でフクレナガマドキノコバエの成虫1頭を採集した。また、中国国内で記録されたナガマドキノコバエ類の標本を検討し、それがフクレナガマドキノコバエであることを明らかにした。
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