研究課題/領域番号 |
15K07492
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研究機関 | 国立研究開発法人 森林総合研究所 |
研究代表者 |
原山 尚徳 国立研究開発法人 森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (60353819)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 通水阻害 / 炭水化物欠乏 / エンボリズム / 乾燥ストレス |
研究実績の概要 |
地球温暖化にともなう森林への渇水影響の増大が予測されているが、渇水による樹木枯死の生理メカニズムは未解明である。そこで、枯死メカニズムの主要因とされてる「喉の渇き」(通水阻害)と「空腹」(炭水化物の欠乏)について、冷温帯の主要造林樹種であるカラマツとトドマツを対象に研究を行った。 ポット苗を用いた潅水停止実験を行い、漸進的な乾燥ストレスの増大に伴う、針葉と幹の通水阻害の進行および、針葉、幹、根の非構造性炭水化物濃度の変化を調べた。両樹種ともに幹よりも針葉の方が、乾燥ストレスが進行した時に通水阻害を生じやすかった。特にカラマツ針葉で最も通水阻害が生じやすく、中程度の乾燥ストレスにおいて、幹の通水機能は維持されたものの針葉の通水機能が完全に失われ枯死した。一方、トドマツでは、強度の乾燥ストレスでのみ針葉や幹の通水阻害が認められた。その一方で、中程度の乾燥ストレスで針葉や幹の通水性が大幅に低下していない個体でも枯死した。炭水化物欠乏においては、カラマツでは、針葉、幹、根いずれの器官においても、乾燥個体と灌水個体の間に非構造性炭水化物濃度の差が認められなかった。一方、トドマツでは、根のデンプン濃度、および針葉、幹、根の可溶性糖濃度が乾燥個体で有意に低下していた。これらの結果から、カラマツでは主に針葉の通水阻害が渇水による枯死要因であるのに対し、トドマツでは主に糖の欠乏が渇水による枯死要因であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、主要な北方造林樹種ポット苗の乾燥ストレスが生じた時の通水阻害と炭水化物欠乏の進行を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
近年、造林用苗木として新たに開発されているコンテナ苗について、H27年度と同様の実験を行い、乾燥ストレスに伴う、通水阻害および炭水化物欠乏の進行状態を従来の裸苗と比較することで、細根の発達が乾燥による樹木枯死要因に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、水分通道度の測定のために溶存ガス除去装置を計上していたが、所属研究機関の既存の装置で代用できたため、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り、実験用苗木、炭水化物や水分通道度測定のための試薬や消耗品の購入、成果発表の旅費などに使用する。また、当初の計画に繰越金を加えて、実験補助の人件費として使用し、より多くの試料の分析を行うことで、研究を進展をはかる。
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