研究実績の概要 |
スギは心材色に変異が大きく、赤心と黒心系統があるが、黒心系統は化粧性・運搬・乾燥に難があるとされている。そこで、遺伝および環境の影響を受けて材の着色に何らかの役割を果たしている可能性の指摘されているカリウム量(心材に存在するカリウム量が多いものほど心材色が黒い傾向がある)に着目し、葉や発根部などの材を破壊することなく計測できるカリウム量と心材色との関連性を評価した。 まず、すでに取得されている心材色(単一の苗畑で育成した約30年次の幹における表色値)のデータに基づいて、典型的赤心および黒心系統を10系統ずつ選んでさし木増殖を行い、異なるカリウム条件で育成した。また、典型的赤心および黒心系統について、20年間暗所に保存してあった円盤の心材部および、葉、さし木の発根部で検出されるカリウム量に関するデータを取得した。心材部のカリウム量に関しては心材色との相関があったが、針葉や根でのカリウム量とは明確な相関が見られなかった。 加えて、関東育種基本区の精英樹380系統について、心材色のL*値とすでに取得されている4,801座のSNP遺伝子型(Uchiyama et al.(2014))を用い、分集団と家系構造を考慮したQKモデルを用いてアソシエーション解析を行ったところ、p値が1%以下だったものは64座あり、このような遺伝子座では心材色との関係性があると考えられた。 カリウム量と心材色に相関がみられたのは心材部であったため、カリウム量を用いた非破壊での判別はできなかったがDNA型での簡易判別・早期予測や遺伝子型を用いた育種への応用は可能性があると考えられた。 本研究で育苗した典型的赤心および黒心系統のクローンについては、カリウム条件が3段階に異なる試験地を土壌分析を行った上で設定し、植栽した。これらの材料は将来、心材色における遺伝と環境の影響評価に利用できると考えている。
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