研究課題
放射能汚染した山菜を採取するリスクを減らす手法の開発を目的に、フキとコシアブラについてそれぞれ2つの試験地(フキ:茨城県常陸大宮市私有地、茨城県つくば市私有地、コシアブラ:福島県双葉郡川内村磐城森林管理署管内国有林、福島県南会津郡只見町会津森林管理署南会津支署管内国有林)を設定し、放射性物質濃度の季節変化を調べた。コシアブラの試験地では秋に一部の調査木を伐倒し、地上部除去処理区を設定した。フキの現存量は春から初夏にかけてが最大で、盛夏から秋に最小、秋から冬にかけて少し大きくなった。フキのセシウム137濃度は、一つの試験地では春、現存量の増加とともに上昇し、盛夏に向けて現存量の減少とともに低下した。もう一つの試験地では、現存量の増減にかかわらずほぼ一定値をとった。こうしたフキのセシウム濃度の季節変化は、他の植物でこれまでに報告されている季節変化とは大きく異なるもので、放射性セシウムの吸収や放出についてのフキの特徴が現れていると考えられた。コシアブラでは葉の濃度の季節変化を調べ、秋の落葉期に破壊調査を行って個体全体の放射性セシウムの分布を調べた。また、安定同位体のセシウム133の分布を調べた。この他、日本特用林産振興会が実施した山菜への放射能移行調査と連携して郡山市でゼンマイの検体を採取した。また、次年度以降に予定している放射能濃度の予測モデルのパラメータの作成のため、福島県双葉郡大熊町の帰還困難区域での検体採取の準備を進めた。これらの成果は学会やシンポジウムで公表するとともに、国や福島県の山菜の放射能汚染関連の事業の成果評価や新規事業の試験設計において活用した。
2: おおむね順調に進展している
計画したフキとコシアブラの試験地設定、定期的検体採取を行えたこと、次年度以降に予定している調査の準備も順調であること、そのうちのゼンマイについては前倒しでデータが得られ、他団体の調査と連携することにより、計画以上の量・質のデータが得られていること、一方、採取した検体の分析が年度内に完了しなかったことから、全体としておおむね順調と判断した。
フキの調査区にも地上部除去処理区を設けて調査を継続し、汚染度予測の時空間モデルを作成・検証する。結果をふまえて、季節変化を考慮した山菜採取による汚染リスク判定法を提案する。成果を公表し、活用する。
予定価格と落札価格が異なることなどにより発生した差額である。
物品費の一部として使用する。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
日本森林学会誌
巻: 97 ページ: 158-164
Proceeding of the International Symposium on Radiological Issues for Fukushima's Revitalized Future Paruse Iizaka, Fukushima City, Japan, May 30-31(Sat.-Sun.), 2015
巻: なし ページ: 57-61
関東森林研究
巻: 66 ページ: 225-228