侵略的外来種であるクビアカツヤカミキリAromia bungiiのものと疑われるフラスを日本国内の7地点で採集し、複数の抽出キットを用いてDNAを抽出した。抽出したDNAを鋳型に、ユニバーサルプライマーを用いてミトコンドリアDNA CO1領域を増幅した。DNA抽出キットによってはその抽出が不良となることが判明した。適切に抽出すると95%のサンプルで同領域が増幅でき、フラスからの遺伝子抽出を効率的に行う手法が確立できた。未被害地のフラスサンプルも解析でき、ともにクビアカツヤカミキリのものではなくゴマダラカミキリのものであることが、塩基配列によるバーコーディングにより判明した。本手法を用いることで、クビアカツヤカミキリの侵入が警戒されていた地域で未侵入であるという確認ができ、現場での防除活動に科学的知見を還元できた。サクラの樹幹を加害する昆虫種の成虫について、調査対象の領域の塩基配列を決定し、クビアカツヤカミキリと他種の識別が可能なことが判明した。そこで、遺伝子の増幅箇所の内部に対象種に特異的なプライマーを設計して、サクラ等の樹木から排出されたフラスによる他種との識別を可能にした。 また、本研究から被害情報の共有の重要性を改めて認識し、即座に被害情報を記録できる方法を模索し、インターネットを用いた情報収集法を考案した。その収集の基礎となるシステムを本研究成果として試作した。今後、研究成果のアウトリーチ活動で利用できるよう活用体制の構築が必要となる。
|