研究課題/領域番号 |
15K07502
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研究機関 | 日本工営株式会社中央研究所 |
研究代表者 |
伊藤 隆郭 日本工営株式会社中央研究所, その他部局等, 研究員 (80334035)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 掃流砂 / ロードセル(荷重計) / 水中重量 / 相互相関法 / 掃流砂量計 |
研究実績の概要 |
平成27年度の当初予定では,掃流砂量計一式の開発のための準備を行うと共に,室内水路実験を推進する予定であった。事前の予備検討により,水中重量を計測するための水没するロードセルの仕組みに関する新たなアイディアが生まれたため,これを実現するために,掃流砂量計一式の試作機の作製に注力した。そのため,物品費として,特注品の改良型水中荷重計(一式)の予算を執行した。試作した掃流砂量計の作動確認等を空気中・水中で行い,計測機器の準備を行った。 申請者らが,以前に取得した室内水路・現地水路実験データを用いて,掃流砂の移動速度に関する検討を行った。掃流砂流の水中重量や底面付近の水流速度に関する連続データの解析を行った。計測では,カメラ等による流況(静止画,動画)の撮影,ポイントゲージ等による水深,底面流速計による底面付近の清水流速の計測を行った。これらの機器は,研究代表者の組織が所有のものを用いた。 一方,流砂理論の適用による水流の底面流速と掃流砂流の平均速度の推定等の理論展開について,掃流砂を含む清水流について,砂礫の移動速度と底面付近の清水流の流速との関係を理論的に演繹し,初年度の段階で,フレームワークの見通しをつけた。例えば,既往の他の手法のレビューを行うと共に,粗面乱流の対数型の流速分布を仮定し,清水流の鉛直方向の流速分布を解き,底面付近(河床から0.3cm)の清水流速を求めた。その流速と掃流砂流の移動速度が比例関係であると仮定し,比例係数を実験データを用いて逆算した。 なお,研究成果の一部は,査読付き論文等の学術雑誌への投稿を行い,速報性の高いもの及び本成果を通じて派生的に生まれたアイディア等は,口頭発表(査読なし)に発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特段,研究の進捗に関する問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
平成28 年度においては,主として,掃流砂量計一式の試作機を用い,室内・現地実験を推進する。室内実験においては,粒径が一様な複数種類の砂礫を購入し,定常・等流場における掃流砂量と掃流砂量計による計測データとの相関関係を確認し,掃流砂量計の計測範囲等に関する検討を行う。現地実験においては,京大穂高観測所(研究協力者1)の所有する現地水路を用いた実験を行う。出水に応じた底面流速計のデータと掃流砂量計による土砂の重量に関する計測データを収集する。得られたデータを理論検討において構築された掃流砂の移動速度の予測式を用いた掃流砂量と比較し,水路実験で同定された実験定数の普遍性の検証を行う。さらに,現地設置された機器一式の耐久性・維持管理に必要なデータも取得する予定である。また,京大穂高観測所の観測水路には大型バケット式のピット流砂箱があるため,これが一杯になるまでの間は掃流砂の土砂量が計測されているため,掃流砂量計一式で計測されるデータとの比較検討を行う予定である。流砂速度は2つの荷重計の波形の相互相関法を用いていたが,粒径・流砂量に対して,同法の適用性の限界が見えつつあり,他の手法の適用性等の検討により流砂移動速度の精度を向上させる。 また,底面せん断力・流速および流砂移動速度の関係に関する理論的な検討を行う。掃流砂量計一式の機器の補修のための消耗品(鉄材等)や全般的な消耗品を予定している。当該年度においては,前年度に得られた水路実験のデータ等の結果について,外部からの意見を伺うために,国外内の関連学会発表の旅費・参加費,研究協力者や外部学識者への意見聴取の旅費や謝礼も見込む。当初,協力者(研究協力者2)であったロードセル等の開発者(団体)の荷重計の水中での適用性において不備が生じたため,平成28年度以降では,他の協力者を得て,掃流者量計の改良等を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の当初予定では,掃流砂量計一式の開発のための準備を行うと共に,室内水路実験を推進する予定であった。事前の予備検討により,砂礫の水中重量を計測するための水没するロードセルの仕組み,特に,流水の中で完全に水没させる方法に関する新たなアイディアが生まれたため,これを実現するために,掃流砂量計一式の試作機の作製に注力した。これにより,当初の研究計画よりも全体の研究推進が効果的になり,しかも,得られる成果の質が向上するものと考えられたため,平成27年度においては,これを先行して推進することとした。そのため,試作機の作製における材料・機器(部品等)の購入を優先させることになったため,当初,購入予定であった計測機器やデータ収集装置等の購入を変更し,掃流砂量計の試作機の作製費用に充てることになり,直接費に対して,若干の余剰が生じた。直接費に関連して,間接費も同様に,余剰が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年度)においては,ほぼ,当初計画の研究推進を行うが,平成27年度において十分な研究推進が行えなかった,室内の水路実験を行う予定である。次年度に使用する金額が発生したものは,本実験の推進における実験材料や消耗品の購入等に使用する計画である。具体的な実施計画等については,上記の"今後の推進方針"の平成28年度の実施予定の中で示している。 室内水路実験に係る実験材料や消耗品の購入等に使用する材料や消耗品の購入の一部は,平成27年度に予定していた研究推進のために予算執行する予定である。従って,平成28年度の研究課題の推進では,支払請求の申請時に想定していた課題に対して,これを推進する。平成27年度に予定していた研究課題と次年度に推進する研究課題の内容が類似するものに対しては,これを推進して予算執行を行うが,次年度のみの研究課題に対しては,前年度に発生した余剰予算を使用しない。
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