研究実績の概要 |
未利用樹木成分のセスキテルペンおよびジテルペンの自動酸化反応を試み,生成物の生物活性について検討した。caryophyllene, humuleneの自動酸化ではこれまで明らかにしていたエポキシドに加え,その立体異性体や開環したアルコールが長時間の熱反応で生成することが示された。longifoleneとthujopseneについても,これまで得ていた反応生成物以外の生成が確認でき,それらの構造決定と反応機構の解析を行った。その他,hedicaryolは異性化が進行すること,cadineneは自動酸化で脱水素体のcadarene,アルコール,ケトアルコールなどの複雑な生成物を与えた。ジテルペンでは特に特徴的な自動酸化反応がcembreneで見られ,酸素付加体のオキサイドやジオールなどが触媒・溶媒を使用せず原料の加熱のみで容易に生成することが示唆された。自動酸化の反応機構の解析で特にlongifoleneについて新たな知見が得られ,各種反応生成物がエポキシドを中間体として生成することが実験的に確かめられた。反応生成物の生物活性の検討では,特に,longifoleneとthujopseneの反応生成物についての詳細な検討で有用なデータが得られた。longifoleneの自動酸化物の中で今回新たに単離したhydroxy-ketone体は強い抗シロアリ活性を示した。また抗菌活性はlongifolic acidが木材腐朽菌に対して強い活性を示した。thujopseneでは反応中間体の過酸化物2量体が単離され生物活性を検討したが,強い活性は示さず,主要な生成物としてGCで観測されるmayuroneが活性を示した。その他の成分についての検討においても,原料よりも強い活性が生成物に見られており未利用成分を自動酸化によって有用な生物活性成分に容易に変換することができることを明らかにした。
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