研究実績の概要 |
β-1,3/1,6-グルカンは真菌類や褐藻類等に含まれる多糖であり、一部は免疫賦活作用を示ことが知られている。しかし、β-1,3/1,6-グルカンの免疫賦活化メカニズムには不明な点が多く、受容体への結合様式や結合最小単位が明らかにされていない。真菌類のβ-1,3/1,6-グルカンは他の物質と複合体を形成しながら、不均一かつ複雑な構造で天然に存在している。そのため、天然多糖を用いると活性発現に重要な構造の特定が困難である。 H28年度までに、きのこ類(スエヒロタケおよびウシグソヒトヨタケ)由来のβ-1,6-グルカナーゼの合成酵素への変換に成功し、フッ化ゲンチオビオースを用いて糖転移活性を行うことができた。そこでH29年度は、β-1,6-グルカナーゼの活性中心をグリシン、アラニン、セリンにそれぞれ変換して得られた合成酵素を作成し、酵素合成生成物の分子量解析と培養細胞を用いた免疫賦活作用の解析を行った。 変異β-1,6-グルカナーゼのβ-1,6-グルカン合成能力を評価したところ、生成するオリゴ糖の種類や長さに違いが認められ、活性中心をセリンに変換した酵素において、最も高重合度の生成物が認められた(13糖)。また、合成したグルカンオリゴ糖の免疫賦活作用を評価するため、マウスのマクロファージ様細胞(RAW264.7細胞)を用いてTNF-αの発現量をリアルタイムPCRで解析した。酵素反応前の基質と比較し、反応6、48時間の方がTNF-α発現量が多かったことから、酵素合成物が高い免疫賦活作用を示すことが示唆された。また、比較対象として用いたβ-1,6-結合の2糖であるゲンチオビオースと比較して有意に高い作用が認められた。一方で、生成物の収量が低いことから、現在酵素反応の最適化と免疫賦活作用についての再現性を確認中である。
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