研究実績の概要 |
きのこ類に含まれるβ-1,6グルカンは免疫活性化機能を持つ。本研究では純粋なβ-1,6グルカン、さらにはβ-1,6グルカン構造を有する機能性糖鎖を人工合成することを目的とした。H29年度までに、きのこ類(スエヒロタケおよびウシグソヒトヨタケ)由来のβ-1,6-グルカナーゼの合成酵素への変換に成功し、フッ化ゲンチオビオースを用いて糖転移活性を行うことができた。そこでH30年度は、引き続き①糖鎖合成反応条件の最適化と、②得られた酵素反応生成物のマクロファージ様細胞を用いた生理活性機能、③MALDI-TOF MSを用いた生成物の分子量解析を行い、再現性を確認しながら応用の可能性についても検討した。 糖鎖合成反応条件を検討したところ、本反応は30度以上の温度で殆ど進まないことが明らかとなった。よって、ある程度分子の運動を抑えることが、本糖鎖合成反応には重要であることが示唆され、20度程度が最適条件であることが見出された。β-1,6-グルカナーゼの活性中心をグリシン、アラニン、セリンにそれぞれ変換して得られた合成酵素を作成し、それぞれ生成物を評価したところ、生成物の構造および免疫賦活機能が異なることが示唆された。さらに、セロビオースを反応溶液に添加し、100mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)、20mMフッ化ゲンチオビオース、20℃、48hの条件で反応させた際、β-1,4およびβ-1,6グルコシド結合が混在したようなオリゴ糖の生成が、低収率ではあるが生成が認められ、天然では希少なβ-1,6グルカンも人工的に合成可能であると考えられた。
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