研究課題/領域番号 |
15K07506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 聡 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (00420224)
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研究分担者 |
和田 昌久 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40270897)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セルロース / LiBr / 多孔性 / ゲル / クロマトグラフィー |
研究実績の概要 |
LiBr水溶液で溶解したセルロース溶液のエマルジョン化で調製したセルロース系のナノ多孔性ビーズの特性解析を引き続き進めた。サイズ排除クロマトトグラフィー(GPC)の充填材としての性能評価において、各種タンパク質スタンダードの分離性能を評価した。その結果、校正曲線は理論値とは一致せず、分子量以外の因子がタンパク質分離に作用していることがわかった。前年度、水溶性多糖であるデキストランではGPC分離において直線性の高い校正曲線を与えることがわかっている。分離条件を検討した結果、セルロースゲル表面の疎水性がタンパク質に作用し、ある種のタンパク質では吸着が起こっている可能性が示唆された。既製のセルロース性ゲルでもタンパク質の疎水吸着が示されているが、LiBr法で調製したゲルにおいても同様の疎水構造が形成されていることがわかった。また、本法で調製したセルロースビーズの強度を測定した結果、セルロース濃度と強度がほぼ一致した。広い範囲の分子量のデキストランにおいてGPC分離が良好であった、セルロース2%濃度のビーズにおける耐圧性能は市販の分離担体と同等の値であった。LiBr水溶液から調製するセルロースゲルは水系のセルロース溶媒である利点があるが、これまでのwater in oil エマルジョン法では石油系の油相を使用する。環境低付加な方法を目指すため、市販の植物油によるエマルジョン化を試みた。菜種油を使用した場合、セルロースのビーズ化が達成されたが、ビーズ形状がオルトジクロロベンゼンの場合と異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Water in Oil エマルジョン化で真球状セルロースビーズの調製できることがわかり、GPC担体としての利用が期待されたものの、タンパク質の非特異的吸着やセルロースを材料とする利点である強度の発現において、解決すべき課題が生じた。これらの問題を解決するため、既存の報告を含め方策を収集し来年度に展開する。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質のGPC分離における非特異的吸着において、ゲル化後の洗浄溶媒を複数種さらに検討し、ゲル表面の疎水性度の制御を試みる。ゲルの強度のついては、水酸基の架橋反応の検討と高分子量セルロース原料の溶解と再生を試みる。架橋による効果ではゲル表面の疎水性の制御の可能性も期待している。以上の実験により、セルロースの優位性である高強度のヒドロゲルの調製を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
セルロースゲルの調製のセルロース原料についてこれまで使用していた市販品が製造中止となったため、代替品を調査する必要が生じ、予定していた試薬の購入を見合わせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
数種のパルプ製品について分子量を測定し、適切なセルロース原料を次年度に購入する。
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