研究課題
ショウロ菌感染クロマツ実生の水および塩ストレスに対する反応性を評価した.具体的には,塩に対する反応性が異なるショウロ菌を人工的に宿主クロマツ実生に接種して感染苗木を育成し,その実生苗木に水または塩ストレスを与えて,生育状況とナトリウム取込み量を調査した.その結果,未接種クロマツ実生に水ストレスを与えると枯死したが,ショウロ菌を接種した実生の枯死は認められなかった.塩ストレス試験においては,ショウロ菌を接種しなかった実生と塩感受性菌株を接種したクロマツは全て黄化した.一方,好塩性株菌株を接種したクロマツ実生では,約半分が緑色葉を保持していた.以上の結果から,宿主クロマツ実生に塩ストレス耐性を付与するためには好塩性菌株を用いることが有効であることが示唆された.次に,宿主クロマツ実生のナトリウム取込みに及ぼすショウロ菌感染の影響について調査した.その結果,非塩ストレス下においては,ショウロ菌接種クロマツ実生のナトリウム含有量が,ショウロ菌を接種していない実生と比較して著しく高く,ショウロ菌感染によりナトリウム吸収が促進された.また,塩ストレス下では,ショウロ菌感染の有無,および,感受性菌株接種実生と好塩性菌株接種実生との間の有意差は認められず,ショウロ菌の塩に対する反応性とナトリウム取込みとの関連性は少ないと思われた.今日まで,ヒダハタケ菌とセイヨウハコヤナギの外生菌根共生系においては,外生菌根の菌鞘がナトリウム吸収を阻害し,その結果耐塩性が付与されると報告されている.しかし,ショウロ菌とクロマツ実生を用いた今回の試験結果は,共生することで反対にナトリウム吸収が促進された.従って,外生菌根菌の宿主樹木への塩ストレス耐性付与の機構は,共生する外生菌根菌と宿主樹木の組合せでそれぞれ異なると思われた.
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Mushroom Science and Biotechnology
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