研究課題/領域番号 |
15K07517
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
入江 俊一 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (30336721)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 白色腐朽菌 / リグニン分解 / 木質バイオリファイナリー |
研究実績の概要 |
ヒラタケPC9株、Phanerochaete sordida Y624株を宿主としてヒラタケ由来プロテインカイネースA触媒サブユニット遺伝子(PKAc1およびPKAc2)を過剰発現させたところ、リグニン分解速度の有意な上昇が認められた。特に、ヒラタケPC9株は分解速度が2倍程度になると変化が顕著だったが、その効果の発現には少量の酵母エキス添加が必要だった。ヒラタケPC9株における酵母エキス要求性が他のヒラタケ株においても見られるかどうかを確認するために、ヒラタケ#261株にPKAc1およびPKAc2を導入した。現在、リグニン分解性試験を行っているところである。 ヒラタケPC9株を宿主としたPKAc1およびPKAc2過剰発現株についてRNA-Seq解析を行うために木粉培養物から全RNAの抽出を試みた。しかし、適合する品質のサンプルが得られなかった。通常の方法では木粉が十分に摩砕できなかったためと思われる。現在、使用木粉の粒径やガラスパウダー法などについて検討しているところである。 ファージディスプレイ法を用いたヒラタケCaM相互作用タンパク質遺伝子の検索を行ったところ、100遺伝子が検出された。そのうち、最大頻度で検出されたアルドケトリダクターゼ遺伝子を大腸菌で発現させ、タンパク質の性質を解析したところ、2量体を形成するNADPH依存性のキシロースリダクターゼあることが強く示唆された。 本研究では複数の選択マーカー遺伝子を必要とするため、ヒラタケにおける新たな選択マーカー遺伝子の開発を行った。その結果、ビアラホス耐性遺伝子とノーセオスリシン耐性遺伝子を用いたヒラタケ形質転換に初めて成功し、詳細を報文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA-Seq解析については遅延しているが、2つの選択マーカー遺伝子の開発に成功し、CaM相互作用タンパク質の解析でも進展があるなど、概ね順調に計画が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上述したとおり、木粉からの全RNA抽出が技術的壁になっている。木粉に小麦ふすまなどの補助栄養源を加えて菌糸量を増やしてからRNA抽出を行うなどの対応をとる他のグループも存在するが、必要ならば同様の対応を試みる。しかし、まずはガラスパウダー法などの摩砕方法について検討していきたいCREB 遺伝子の過剰発現についてはPKAc過剰発現株のRNA-Seq解析結果を見てから取り組みたい。 RNA-Seqデータが得られれば、ヒラタケにおいて遺伝子を過剰発現させる系、破壊する系は本研究室で十分に整備されているので、鋭意進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
木粉からのRNA抽出がうまくいかず、RNA-Seq解析用のシークエンスを業者に依頼する代金分が持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(2017年度)にRNA-Seq解析を行うために使用する。
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