研究課題
RNAi効果によりPKAc1遺伝子の転写物量が30分の1に減少するヒラタケ株を取得した。木粉培地に植菌したところ、野生型株と比較して木質リグニン分解性が有意に低いことが示された。これにより以前から示唆されていたPKAc1遺伝子とリグニン分解との関連が支持された。リグニンペルオキシダーゼ(LiP)は最大級の酸化還元電位を持つペルオキシダーゼであり、Phanerochaete chrysosporiumのリグニン分解において重要な役割を果たす。ヒラタケはマンガンペルオキシダーゼ、万能型ペルオキシダーゼを持つが、LiPを持たない。ヒラタケのリグニン分解性向上を期待してヒラタケにP. chrysosporium主要LiPアイソザイム遺伝子LiP H8を導入し、活性発現を確認した。現在リグニン分解性について試験を行っているところである。飼料作成のための発酵システム開発に使用可能なカスタムヒラタケ株作成を目指し、ヒラタケにおける窒素代謝抑制機構の解析を行った。ヒラタケのプロテアーゼ活性発現はグルタミンにより効率的に抑制され、子嚢菌と同様の窒素代謝抑制機構が担子菌にも存在することが示唆された。しかし、アンモニアでは抑制効果が少ないこと、尿素でも効率的に抑制可能であることなど、子嚢菌における既知の観察とは異なる点も観察された。窒素代謝抑制機構の主要調節遺伝子AreAのホモログをヒラタケ全ゲノムデータから取得し、クローン化した。現在、AreA-eGFPの細胞局在の確認と、AreA破壊ヒラタケ株の取得を試みている。PKAc過剰発現株のRNA-Seq解析については、木粉培養物から良好な全RNA抽出ができない技術的問題を抱えており、得られた結果の信頼性に自信を持てない状況がつづいている。今後とも新たな抽出法の開発を継続していく予定である。
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