振動試験は簡便で優れたヤング率の非破壊測定法であるが、試験体の密度測定が必要である。桟積みした木材の品質評価や木製ガードレール用横梁の現場設置後の劣化診断などでは個々の木材を取り出して重量測定が必要なため相当の労力を要する。本研究では、錘の付着により打撃音が低下する現象を利用した、木材の重量測定を行わずに密度とヤング率が評価可能な振動試験方法(質量付加振動法)の実際の現場への適用性を明らかにすることを目的とした。 桟積みの桟木位置に関して、桟木を振動の腹の位置に配置するよりも節の位置に配置する方が、質量付加振動法の推定精度が高かった。スギ製材の実大桟積みモデルに関して、質量付加振動法の推定精度は、桟木の配置による共振周波数の変化が少ない振動モードで測定することが好ましいと考えられた。また、推定値のバラツキがやや大きくなる傾向がみられ、これは桟木によって振動が拘束されるためと考えられた。錘の付着方法に関して、木ねじ留めは、試験体にねじ穴が空くが、付着脱着操作は簡便で質量比(錘/試験体)の影響を受けにくい一方、粘着テープ留めは質量比2%程度まで実用的な測定が可能であった。 高含水率状態の試験体の乾燥過程において、質量付加振動法の推定精度は、乾燥過程での試験体の重量減少の影響を受け、曲げ振動の方が縦振動よりも高かった。スギ柱材に関して、木口面を仕上げない場合は、木口面の不斉による錘の付着箇所での減衰によって推定精度が低下したが、木口面を仕上げた場合は、密度とヤング率の非破壊評価法として本法が適用できると考えられた。 木製ガードレール横梁用のスギ円柱状試験体を木製ガードレール用支柱に取り付け、試験体に錘を加除して曲げ振動試験を行なった。その結果、木製ガードレールの横梁では、支柱への取り付けを多少緩めると質量付加振動法により正確に密度とヤング率を推定可能であると考えられた。
|