研究実績の概要 |
磯焼け域ではウニなど植食動物の摂餌圧が高く海藻が生えづらくなっているが,海底には胞子や微小世代が潜在的植生(海藻シードバンク)として存在し,藻場回復(ウニ除去)の適地選定の際には有益な情報となる。これは,海底の礫(重い)を用いた培養により検出できるが,1~2ヶ月を擁する。本研究では磯焼け域に多産するユキノカサガイ(小型軽量)を用い,殻上群集のメタゲノム解析による迅速化を検討した。 宮城県女川町指し浜地先磯焼け域の4水深帯(2, 6, 8, 11m,景観で区分)で密度を調べた結果,ユキノカサガイとウニは水深2~6mで高密度,以深で低密度であった。各水深帯の貝殻(計150個)を使い,PESI培地で約6週間培養した結果,海藻14種が出現した。ボウアオノリの出現率が最も高く,各水深帯の検出種数は10~12種で大差なかった。 貝殻から剥削したサンプルを用い,褐藻と紅藻を標的としてrbcL遺伝子を用いたメタバーコンディング解析を行った。Rosch454では57531配列を得て,褐藻17,紅藻13のOTUが検出された。各水深帯のOTU数は11~26で,最多の冠砂帯でワカメやスジメのOTUが検出された。類似度解析により区画帯毎に植生の差が認められ,冠砂帯は特異的であった。 Rosch454のサービス停止後,Miseq分析を行った結果,褐藻190OTU,紅藻217OTUが得られ,各々約20%が種まで同定できた。OTU数(各6サンプル)は,砕波帯夏112,同冬97,残藻帯夏97,同冬139,磯焼け帯夏132,同冬115,冠砂帯夏158,同138で,残藻帯を除き,夏にOUT数が多かった。最終年度は,3年間の成果を整理したほか,報告書とマニュアル,論文の作成を行った。 本研究により,磯焼け域における海藻シードバンク検出の水中作業の軽減と迅速化が可能となった。
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