研究課題
平成29年の4~10月にかけて、長崎大学鶴洋丸を用い、長崎県大村湾中央部(海底水深~21m)の水柱中3層を、1カ月に1-2回の頻度で計8回の調査を行った。なお、海底直上水の溶存酸素濃度は、7月から9月にかけては3mL/L以下と低くなっていた。球換算直径(ESD)が4~10μmおよび10-20μmのプランクトンの出現個体数は、溶存酸素濃度が低い場合でも、減少せずにやや増加する傾向が見られた。また、ESDが20μm以上のプランクトンでは、溶存酸素が低い場合でも、1つのサンプルを除き、出現量の顕著な減少は見られなかった。ESDが20μm以上のプランクトンでは、鞭毛を備えた渦鞭毛藻や珪質鞭毛藻、また、遊泳肢を備えたカイアシ類ノープリウス幼生が遊泳力を持つプランクトンとして出現していた。これらのプランクトンは、貧酸素水塊中でも、出現量や組成割合が小さくはならない様子が頻繁に観察された。平成29年8月21日の海底付近では、貧酸素化が進行して、バクテリアマットが形成されていることが水中ビデオカメラによって観察された。こうした状況下において、ESDが4~10μmおよび10~20μmのプランクトン出現量は、それぞれの画分で共に最大値を示したが、ESDが20μm以上の大型のプランクトンでは最小値を示した。これらの結果から、ESDが4μm以上のプランクトンにとっては、大村湾の夏季の海底で起こる貧酸素化は、決して死の世界ではないことが明らかとなった。また、遊泳することによって不適な環境を避ける能力を有する分類群であっても、貧酸素水塊を避けずに、そこに留まる場合があることが考えられた。さらに、貧酸素化が進行し、海底にバクテリアマットが形成されるような環境は、大型プランクトンの出現量に対しては負に作用するが、小型プランクトンの出現量に対しては正に作用する事が示唆された。
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Marine Ecology Progress Series
巻: 592 ページ: 141-158
10.3354/meps12507