研究課題/領域番号 |
15K07535
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
中川 至純 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (70399111)
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研究分担者 |
西野 康人 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (50424677)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海跡湖 / 能取湖 / 動物プランクトン / 中期的経年変動 / カイアシ類 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、能取湖の持続可能な漁業に貢献するため、漁業生産の基盤となる動物プランクトン現存量の中期的経年変動を明らかにすることが目的である。平成27年度は、能取湖の最深部(水深約21 m)の定点において、平成27年4月から平成28年3月にかけて月に1回以上の頻度で観測を実施した。 (a)環境データ:平成27年度の能取湖では、高温高塩分の宗谷暖流水が5月から9月に分布し、10月から4月には低温低塩分の東樺太海流水が分布した。宗谷暖流水と東樺太海流水が季節的な交替が認められた。動物プランクトンの餌の指標となるクロロフィルa濃度は、4月の深層で高く、5月から6月にかけて低下するが、7月以降は10月にかけて深層から表層に極大層が移動した。冬季にはクロロフィルa濃度は再び低密度となったが、3月には水中全体で高密度となった。 (b)動物プランクトン(目合0.1 mmネット):個体数密度で表した動物プランクトンの現存量は、4月は低かったが、6月には4月の10倍にまで増加し、調査期間中で現存量が最も高かった。その後現存量は減少し、8月下旬に再び現存量が増加した後、12月に向かって減少した。結氷期の2月にわずかな増加が認められたが、その後の結氷期は4月の半分程度までに減少した。乾燥重量で表した場合においても、同様の季節変動がみられた。5月から6月は腹足類、7月から10月はカイアシ類と二枚貝類、11月から3月はカイアシ類が優占した。 (C)過去のデータ:平成22年度から平成24年度に得られたサンプルの解析を行い、宗谷暖流水と東樺太海流水の季節的な交替が起こること、6月に動物プランクトンの現存量が最も高くなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、能取湖における動物プランクトン現存量の中期的経年変動を明らかにすることが目的である。平成27年度から平成29年度の動物プランクトン現存量を単年度毎に明らかにすると同時に、平成26年度以前(平成20年度から)のサンプルを解析する。平成27年度では、4月から結氷期の3月まで能取湖において調査を行った。当該年度の環境データおよび動物プランクトン現存量(個体数密度)の季節変動を分類群レベルで明らかにすることができた。また、乾燥重量として現存量の変動を明らかにした。 能取湖に出現する動物プランクトン群集は様々な種によって構成されることが分かった。平成27年度では、優占分類群となるカイアシ類について、種レベルで季節変動を明らかにし、水塊交替に伴って群集構造が変動することがわかった。また、能取湖に出現する枝角類についても、種同定を行って、種レベルの季節変動様式を明らかにすることができた。 過去のデータについては、平成27年度は、平成22年度から平成24年度に取得された3年分のサンプルを解析し、分類群レベルの季節変動について明らかにし、6月に動物プランクトン現存量が最も高くなるという類似性が認められた。 以上のように、平成27年度は順調に当初の計画通りに進行していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では、研究計画に基づいて、能取湖における観測を実施し、環境データの取得ならびに動物プランクトンサンプルの採集を行う。得られたデータから、能取湖における季節変動を明らかにして、その変動要因について検討する。また、平成27年度に続いて、過去(平成20年度から平成26年度)に得られたデータの解析を進める。 研究体制については、平成27年度と同様に、中川(研究代表者)と西野(研究分担者)が実施する。中川が動物プランクトン、主に優占種となると予想されるカイアシ類の現存量のモニタリングを担当する。枝角類や貝類などカイアシ類以外の動物プランクトンの現存量のモニタリングも中川が担当するが、瀬川(研究協力者)の協力を得る。西野は物理環境データおよび植物プランクトンの指標となるクロロフィルaを担当する。 さらに、学部学生や大学院生の協力、ならびに西網走漁業協同組合の乗船調査の協力を得て、調査・観測および分析・観察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では、能取湖における調査を月に1回から2回の頻度で行う予定であったが、悪天候等によって月に複数回の調査が困難な月があり、調査実施回数が予定よりわずかに少なかった。そのため、調査および分析等で使用する消耗品および試薬にかかる費用の使用が計画より少なかった。しかし、当初の計画通りに動物プランクトン現存量および環境データの季節変動を明らかにするためのデータは取得できているため、148,174円を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度では、可能な限り複数回の調査を実施することを予定しており、それに伴って必要となる消耗品および試薬等に係る費用に繰越金148,174円を使用する予定である。
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