研究課題/領域番号 |
15K07536
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
荒 功一 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40318382)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プランクトン / 栄養塩 / クロロフィルa濃度 / ピコ・ナノ・マイクロ植物プランクトン / 一次生産 / 相模湾沿岸域 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、27年度と同様に相模湾(江の島沖)沿岸域(水深約55 mに設けた1定点)において各月2回の頻度で計24回の船舶を用いた観測ならびに係留系連続観測を実施し、同海域での年間を通しての物理・化学特性(流向・流速、水温、塩分、栄養塩濃度)ならびに低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ・マイクロ植物プランクトンの出現密度・バイオマス、一次生産速度)などの測定を行った。また、他機関(海上保安庁、気象庁、神奈川県藤沢土木事務所、神奈川県水産技術センターなど)が相模湾沿岸域で測定している気象・海況データなどの各種環境データを入手した。得られた結果より、物理・化学・生物特性は、同海域での先行研究と同様に顕著な季節変動を呈した。また、物理・化学特性として潮位差、水温偏差、塩分偏差、栄養塩濃度偏差(各実測値と過去数年間平均値との偏差)は、数日から数週間のスケールで急激に変動するという季節変動パターンから乖離した短期変動を呈した。平成28年度の特徴は: 1. 平常時、ならびに黒潮系沖合水、陸棚水(深層水)、親潮系中層水、東京湾水の相模湾内への進入過程と時期を特定できたが、その時期・期間に一貫性はなかった。 2. 黒潮系沖合水と親潮系水が長期にわたり断続的に相模湾内で卓越した時期があり、さらに湧昇が起きる時期と親潮系中層水が相模湾内へ進入する時期が隣接する傾向が認められた。 3. 6月~10月に上層(水深20 m以浅)で栄養塩(窒素、リン、ケイ素)濃度が例年と比較して低く枯渇状態であった。全植物プランクトンのバイオマスのうち、栄養塩律速を受けにくいナノサイズのものが年間を通して(特に、夏季・秋季に)優占した。 などであり、本研究課題の目的を達成するための必要不可欠なデータを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27~28年度は、相模湾(江の島沖)沿岸域において各月2回の頻度で船舶を用いた観測と係留系連続観測を実施したことにより、物理・化学特性(流向・流速、水温、塩分、栄養塩濃度)ならびに低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ・マイクロ植物プランクトンの出現密度・バイオマス、一次生産速度)などの測定のほとんど全ての項目についてほぼ当初の計画どおりに進展した。ただし、マイクロ植物プランクトンについては、出現密度測定用の一部試料が未解析であるが、今後解析を進める予定である。また、他機関(海上保安庁、気象庁、神奈川県藤沢土木事務所、神奈川県水産技術センターなど)が相模湾沿岸域で測定している気象・海況データなどの各種環境データの入手については、ほぼ計画どおりに進展した。しかし、一部の機関(神奈川県庁県土整備部河川課)が測定している河川水流入負荷量(主に境川、引地川から相模湾への淡水流量、窒素・リン流入量など)のデータについては、未だデータ提供の申請ならびに入手に至っていないが、今後対応する予定である。以上より、本研究課題の現在までの進捗状況としては、概ね順調に進展しているものと推察される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は、27~28年度と同様に相模湾沿岸域で船舶を用いた観測と係留系連続観測を実施し、同海域での物理・化学特性(流向・流速、水温、塩分、栄養塩濃度)ならびに低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ・マイクロ植物プランクトンの出現密度、一次生産速度)などの測定・試料採取・現場実験・試料分析・データ取得、ならびに相模湾沿岸各地で他機関が測定している気象・海況などの各種環境データの入手を継続して行う。さらに、平成29年度以降は、得られた各種データの解析を進め、平常時、多量の河川水流入、ならびに黒潮系沖合水、陸棚水(深層水)、親潮系中層水、東京湾水の相模湾内への進入過程と時期を特定することで、栄養塩濃度と低次生物特性の変動と平常時、多量の河川水流入、ならびに各湾外水の相模湾への進入との関連性、典型的な変動パターンの構築を図る。さらに、本研究課題の総括として、相模湾沿岸域での一次生産速度に対する陸起源栄養塩(河川水流入と東京湾水の相模湾への張り出しによって供給される栄養塩)と外洋起源栄養塩(黒潮系沖合水、陸棚水、親潮系中層水の相模湾内への進入によって供給される栄養塩)の影響過程と寄与率の評価を試みる。
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