平成29年度は、27~28年度と同様に相模湾(江の島沖)沿岸域(水深約55 mに設けた1定点)において各月2回の頻度で計24回の船舶を用いた観測ならびに係留系連続観測を実施し、同海域での年間を通しての物理・化学特性(流向・流速、水温、塩分、栄養塩濃度)ならびに低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ・マイクロ植物プランクトンの出現密度・バイオマス、一次生産速度)などの測定を行った。また、他機関(海上保安庁、気象庁、湘南港、東京都島しょ農林水産総合センターなど)が相模湾沿岸域で測定している気象・海況データなどの各種環境データを入手した。得られた物理・化学特性として潮位差、水温偏差、塩分偏差、栄養塩濃度偏差(各実測値と過去数年間平均値との偏差)より、平常時、ならびに黒潮系沖合水、陸棚水(深層水)、親潮系中層水、東京湾水の相模湾内への進入過程と時期を特定できたが、その時期・期間に一貫性はなかった。本研究課題の目的の1つである植物プランクトン現存量に対する海況の影響について評価を試みた結果、クロロフィルa濃度は、季節を問わず平常時よりも黒潮系沖合水・親潮系中層水・陸棚(深層)水進入時に低く、東京湾水が相模湾へ張り出した時と多量の河川水流入時に高い傾向が認められた。さらに、本研究課題の主目的である一次生産に対する陸・外洋起源栄養塩の影響については、一次生産速度からレッドフィールド比により推定した植物プランクトンの窒素・リン要求量に対する陸起源(河川水流入、東京湾水の相模湾への張り出しにより供給された)栄養塩と外洋起源(黒潮系沖合水、親潮系中層水、陸棚(深層)水の相模湾内への進入により供給された)栄養塩の寄与率を定量的に評価することを試みた結果、外洋起源のものが陸起源のものをやや上回った。以上より、本研究課題の目的は概ね達成することができた。
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