研究課題/領域番号 |
15K07538
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
武島 弘彦 総合地球環境学研究所, 研究高度化支援センター, 特任助教 (50573086)
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研究分担者 |
安房田 智司 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60569002)
井口 恵一朗 長崎大学, 環境科学部, 教授 (00371865)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 絶滅危惧種 / リュウキュウアユ / DNA分析 / メタ個体群 / 保全 |
研究実績の概要 |
喪失と変質が深刻化している淡水生態系において,絶滅危惧種「リュウキュウアユ」は,その自然集団を奄美大島に残すのみとなった.本研究は,リュウキュウアユの最大個体数を有する東部住用湾集団について,具体的な保全策・存続手法の提案に向けて,(1)生態調査と(2)遺伝分析を行い,メタ個体群構造の実態解明を目的としている. 初年度である本年度は,(1)に関しては,奄美大島東部の住用湾以外の地域も含む合計10の河川について,生息河川調査,個体数調査,ならびに,なわばり形成個体の状況を調べる社会構造調査を年間1回実施し,データを取得した.さらに,西部の合計18河川についても同様の調査を実施し,データを取得することができた. (2)に関しては,25マーカーという大規模なマイクロサテライトDNA分析システムを確立した.先行的に1992年から2008年に採集されたリュウキュウアユ781個体について,構築した大規模マーカー分析を適用したところ,奄美大島東部において,遺伝的差異の程度は小さいものの,統計的に支持される3つのグループが,初めて検出された.また,遺伝分析のための,より非侵襲的サンプリングを目指して,予定していた孵化仔魚のサンプリングにかえて,個体の糞便からのDNA抽出ならびにマイクロサテライトDNA分析を試みたところ,良好な結果が得られた.そこで今年度は,奄美大島東部の5河川,西部の2河川,合計7河川から185個体の糞便サンプルを採集した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)生態調査と(2)遺伝分析の実施により研究を進める上で,まず(1)に関して,研究の基礎となる生息河川と個体数の調査を,これまでにない規模で実施した.この結果により,本格的な河川環境調査のための,ターゲット河川の再調整を行うことができた. (2)の遺伝分析に関しては,まず,25マーカーの大規模マイクロサテライトDNA分析のシステムを確立することができた.さらに12マーカーを分析に加える予備実験に成功しており,計画通り30マーカーを超える大規模分析系が構築されつつある.また,先行して行われた,既存サンプルのDNA分析により,奄美大島東部の3つのグループが明らかとなり,今年度採集した糞便サンプルとの比較検討が可能となった.非侵襲的サンプリングの達成のために試みた,個体の糞便からのDNA抽出ならびにマイクロサテライトDNA分析に成功し,今年度採集した糞便サンプルについて分析の準備が整った.
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今後の研究の推進方策 |
次年度も,分担研究者間の協力連携のもと,今年度実施しなかった河川環境の調査を実施する.河川調査では,今年度明らかになった奄美大島東部の3つの遺伝的なグループを中心として,より多くの河川で糞便サンプルの採集を試みる.遺伝分析については,大規模マイクロサテライトDNA分析システムの基盤が構築できたので,新規採集サンプルの分析を速やかに実施していく.得られた生態・遺伝データに基づいて,有効集団サイズ等のメタ個体群構造推定のための予備的解析を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本格的な河川環境の調査を実施しなかったために,旅費に次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度実施しなかった,本格的な河川環境の調査を,次年度は実施する.
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